口臭に要注意?透析患者さんとお口のケア
透析患者さんは口の中が乾燥しやすく、口の中のトラブルを抱えている人は少なくありません。
口の中にトラブルがあると、口臭も出やすくなります。口臭の具体的な原因と口臭を解消するケア方法について学び、口臭の予防を図りましょう。
透析患者さんは口臭が出やすい?
透析治療を受けている患者へのアンケートでは、17.5%の人が口臭を自覚しています。口の中のトラブルでは、口が渇きやすい64.1%、歯茎の腫れや出血、ぐらつきなどの歯周病の症状や、虫歯の症状、唾液が出にくい症状もそれぞれ20%前後の人があると回答しています。
無作為に抽出した人を対象とした厚生労働省の平成28年歯科疾患実態調査では、口臭があると自覚しているのは9.6%、口が渇く症状は8.5%、歯茎の腫れや痛み・出血は11.3%、歯の痛みやしみる症状は12.2%です。
データを比較すると、透析患者さんの方が口臭を自覚している割合は高く、特に口の渇きは6割以上の人が自覚しています。歯茎の症状や虫歯に関連する症状も無作為対象者よりも透析患者さんで高い割合がみられます。
参考文献1:北所恵・松田光悦 透析療法患者の口腔症状に関するアンケート調査
参考文献2:厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査
透析患者さんの口臭の主な原因
透析患者さんは唾液が出にくく、口の中が乾燥しやすいため、舌苔や歯周病などのトラブルを抱えやすく、口臭が発生しやすい状態です。また、腎臓機能の低下や糖尿病による病的な口臭もあります。
舌苔
一般的に口臭の原因はほとんどが口の中にあり、その6割は舌苔(舌に付く白い苔)から発生すると言われています。
舌苔は、口の粘膜の細胞が剥がれて溜まり腐敗したもので、細菌の温床となります。唾液の分泌が低下しやすく、口の中が乾燥しやすい透析患者さんは、舌苔が発生しやすい口内環境です。
舌苔は硫化水素などの揮発性硫黄化合物を産生し、卵の腐ったような口臭を出します。
歯周病
唾液の量が減り、口の中が渇きやすい透析患者さんの口の中は、歯周病の細菌が増加しやすい状態です。
歯周病の細菌は魚や野菜の腐ったような生臭い臭いがするメチルメルカプタンを大量に発生し、強い口臭の原因となります。
病的口臭
腎臓機能が低下している透析患者さんは、尿素やアンモニアを十分に排出できず、血液中の濃度が高くなって、口臭が尿のようなアンモニア臭となります。
透析患者さんに多い糖尿病では、血液中にケトン体が増加し、甘酸っぱい臭いのアセトン臭の口臭となります。
口臭を解消するためには
口臭の解消には、口の中の衛生状態を保つことが大切です。
歯科での定期的なケアと毎食後のブラッシング
歯科の定期健診・クリーニングで、しっかりと歯垢・歯石除去をすることと、毎食後の歯磨きで歯周病や虫歯の予防を図ることが大切です。
歯科では、正しいブラッシングや口の乾燥を防ぐための保湿ケアの指導も受けましょう。
舌苔のケア
口臭治療として外せないケアが舌苔を除去する舌磨きです。舌の粘膜はデリケートであるため、舌を傷つけないように舌ケア専用の舌ブラシで、1日1回のケアを行います。
舌磨きをするときのポイントは次のとおりです。
- ・舌ブラシを使用する
- ・朝食後の歯磨き前に行う
- ・嘔吐反射をおさえるために舌を大きく前に突き出した状態で行い舌はひっこめない
- ・舌の奥から手前に優しく掻きだし手前から奥にはブラッシングしない
- ・2~3回繰り返した後に歯磨きを行う
- ・舌ブラシは流水で、舌苔がなくなるまで洗い流す
まとめ
唾液の分泌量が少なく、口の中が乾燥しやすい透析患者さんは、口臭の原因となる舌苔や歯周病が起こりやすい状態です。
歯周病や舌苔の予防は、定期的な歯科でのクリーニングと毎日の家での歯磨き、舌磨きのケアが必要です。舌はやわらかく傷つきやすい組織であるため、専用の舌ブラシで優しく磨かなければなりません。
ポイントをおさえて正しいケアを行い、口臭を予防しましょう。
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