透析患者さんが注意したい市販の風邪薬とは
咳の症状や熱の症状、頭痛の症状など、症状に合わせた風邪薬は市販で豊富に販売されており、手軽に購入できます。「ちょっとした症状であれば病院に行かなくても市販の風邪薬で大丈夫かな?」という気持ちになることもあるでしょう。
しかし透析患者さんの場合は、「風邪かな?」と本人が思っていても、重篤な病気のサインであることもあります。また、風邪薬に含まれている成分が腎臓の機能の悪化や、重篤な副作用を引き起こすこともあります。
どのような風邪薬に注意が必要か詳しく確認していきましょう。
透析患者さんは市販の風邪薬の処方は要注意
市販の風邪薬は症状に合わせて選べるようになっており、種類も豊富です。
例えば、頭痛や熱の症状に対しては解熱鎮痛薬、咳やたんの症状に対しては咳を鎮める薬やたんを切る薬、のどの痛みに対しては抗炎症薬、鼻水や鼻詰まりの症状に対しては抗ヒスタミン薬や抗コリン薬、頭が重たい症状に対してはカフェインなどがあります。
ひとつの症状に対してではなく、いろいろな成分が入った複数の症状に対して作用する総合感昌薬もあります。風邪のときにはビタミン剤や栄養ドリンク、のどを殺菌・消毒するスプレーやうがい薬、トローチなどを使用する時もあるでしょう。
「ドラッグストアで売っている薬は病院の薬のように効きめがきつくないから大丈夫だろう」「いちいち病院を受診するのも面倒だし、これぐらいの軽い風邪の症状なら市販の風邪薬で治るだろう」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、腎臓の機能が低下している透析患者さんでは、薬を服用すると身体の中に薬の成分がたまってしまったり、腎臓の機能を悪化させることがあります。もともと透析患者さんが飲んでいる薬との組み合わせで副作用が起こることもあります。
風邪と思っていてもほかの原因で症状が出ていることもあります。体調に変化があったときには主治医の先生に相談するようにしましょう。
また、市販薬を購入する際には薬局の薬剤師に症状や透析を受けていること・飲んでいる薬を伝えましょう。服用して症状が悪くなる場合や、2~3日過ぎても症状が改善しない場合は服用をやめて受診しましょう。
参考文献:Healthcare for CKD Patients(慢性腎疾患患者様のヘルスケア)
避けたい薬剤の種類と副作用
透析患者さんが避けたい薬と副作用には次のものがあります。
アルミニウムやマグネシウムを含む薬
アルミニウムを含む薬は、長期間にわたって服用するとけいれんや認知障害、言語障害などをきたすアルミニウム脳症や、骨がもろくなり関節痛を生じるアルミニウム骨症をおこします。マグネシウムを含む薬を服用し、体内にマグネシウムがたまると、意識障害、徐脈などを起こします。
アルミニウムやマグネシウムは胃のむかつきや胃痛などの症状に対する胃散薬、胃腸薬、マグネシウムは便を軟らかくする便秘薬などに含まれています。便秘薬で便が多量に出ると体内の水分が失われて脱水症状を起こすリスクもあります。
咳止めシロップ、漢方薬
シロップや漢方薬はあまり身体に影響がないというイメージがあるかもしれません。
しかし、咳止めシロップや風邪の時に使用される葛根湯・小青竜湯に含まれる甘草は、透析患者さんが服用すると心臓へ負担をかける高カリウム血症や腎機能の悪化を引き起こすことがあります。
ビタミン剤、サプリメント、栄養ドリンク
風邪をひいたときには、補助的にビタミン剤やサプリメント栄養ドリンクなどを使用することもあります。しかし、なかには透析患者さんが避けたい成分が含まれているものや、飲んでいる薬との組み合わせによって重篤な副作用を引き起こすものもあるため注意が必要です。
「ビタミン剤、サプリメント、栄養ドリンク類は薬ではないから伝えなくても大丈夫」とは思わずに、必ず主治医に伝えるようにしましょう。
まとめ
「風邪をひいたかな?」、「なんだか体調がすぐれないな」と思ったら、まずは主治医に相談しましょう。
また、薬局で市販薬を購入する際には、薬剤師に透析治療をしていること・サプリメントやビタミン剤・栄養ドリンクも含めて飲んでいる薬・今の症状を忘れずに伝えましょう。
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