低栄養になりやすい?透析患者さんが食事で気を付けたいこと
透析患者さんは腎不全や透析の影響で低栄養になりやすい状態です。低栄養になり必要な栄養素が不足すると、様々な身体の不調が現れます。
透析患者さんが不足しやすい栄養素と食事のポイントについてみていきましょう。
透析患者さんは低栄養状態になりやすい?
患者さんは低栄養状態になりやすいことが言われています。次のような要因により、透析患者さんは低栄養状態に陥りやすくなります。
- ・老廃物が溜まることや活動量低下により食欲不振を起こしやすい
- ・食事制限による栄養素の不足
- ・透析治療でアミノ酸や水溶性ビタミンが失われる
- ・慢性的な炎症によりエネルギーの合成力が低下している
- ・タンパク質やエネルギーの不足を補填するために、筋肉など体たんぱくが分解される
参考文献1:透析患者さんは、低栄養状態?その対策は?
参考文献2:低栄養について
透析患者さんが不足しがちな栄養素
透析患者さんは透析によって水溶性のビタミンが除去されやすいです。また、カリウムの摂取を制限するために野菜を茹でこぼす処理を行うので、水溶性ビタミンが不足しがちとなります。
透析患者さんが不足しやすい栄養素にはビタミンB、ビタミンC、葉酸、カルニチンなどがあります。
アミノ酸
透析を1回受けるとアミノ酸が5~8g失われ、たんぱく質が20~30gが壊れてしまうと言われています。アミノ酸は筋肉や骨、血液、臓器などをつくっているので、不足すると筋力低下や免疫力低下につながります。
参考文献:高齢透析患者に対する栄養対策及び透析療法
ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6
透析治療によってビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6は多く除去されます。
透析によって半分近くのビタミンB1が失われます。ビタミンB1はエネルギーを作り出すことに関与しているので、不足すると身体のだるさ、疲れやすくなる、食欲低下、息切れ、めまいなどが起こります。
ビタミンB2は糖質、脂質、たんぱく質をエネルギーに変える働きや皮膚・粘膜の働きに関与しており、不足すると皮膚・粘膜の炎症が起こりやすくなります。
ビタミンB6は、たんぱく質の代謝や心の安定神経伝達物質の生成、ヘモグロビンの合成に関与しており、不足すると身体のだるさ、疲れやすくなる、免疫が低下する、」いらいらする、貧血などがみられます。
参考文献:5)蓮池由起子ほか 血液透析時の栄養アセスメントと管理 透析患者のビタミン・ミネラル・微量元素の評価の意義と評価法 栄養-評価と治療 Vol.25 No.4, 36-39, 2008
ビタミンC
透析で多くの量のビタミンCが除去されます。ビタミンCはコラーゲンの生成や抵抗力をつける、鉄の吸収を助ける働きなどがあり、不足すると壊血病(コラーゲン不足で細胞間の結合が緩む)、風邪などにかかりやすくなる、関節が傷みやすくなる、血管がもろくなるなどが起こります。
葉酸
葉酸も透析で失われやすい栄養素です。葉酸は赤血球の生成に関与しているので、不足すると貧血が起こりやすくなります。
カルニチン
透析によって8割近くのカルニチンが失われます。カルニチンは筋肉を動かすためのエネルギーの産生に必要な脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ働きをしています。
カルニチンが不足すると、筋力低下や筋肉のけいれんなどがみられます。
透析患者さんが積極的に摂取したい食品
透析患者さんが不足しやすいビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸を多く含む食品をメニューに取り入れて、バランスよく栄養素を摂取しましょう。
アミノ酸を多く含む食品
肉・魚・卵・大豆製品、乳製品(乳製品はリンを多く含むので透析患者さんは注意が必要)
ビタミンB1を多く含む食品
豚肉のヒレ、モモ
ビタミンB2を多く含む食品
いわし、さわら、卵
ビタミンB6を多く含む食品
ささみ、鶏ムネ肉、いわし、かつお、さんま、さば、さけ、まぐろ
葉酸を多く含む食品
ブロッコリー、オクラ、枝豆、アスパラガス、ほうれん草、春菊、小松菜、いちご
透析患者さんが不足しがちな栄養素を補うメニュー例と食事のポイント
メニューは主食、主菜、副菜をそろえると、カリウムやリンなど過剰な摂取を避けたい栄養素を摂りすぎずに不足しやすい栄養素を補うことができます。
指導されている適正な食事量を守り、1日3食のトータルで栄養素を考えましょう。
メニュー例
- ・オクラとクリームチーズのおかか和え
- ・さばのごまみそ焼きにブロッコリーの付け合わせ
- ・アスパラガスと鮭のホイル蒸し レモン添え
- ・ささみと枝豆のサラダ
まとめ
透析患者さんは食事制限や食欲低下、エネルギーの消費量の増大、透析でアミノ酸や水溶性ビタミンが失われることなどから低栄養状態に陥りやすいことが言われています。
低栄養を予防するために、食事で不足しがちな栄養素を多く含む食品を主食・主菜・副菜のメニューの中にバランスよく盛り込んで摂取していきましょう。
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