高尿酸値になりやすい?透析患者さんと尿酸値の意外な関係
尿酸値が高いと高尿酸血症となり、腎臓が悪くなって透析が必要となることもあります。透析を受けると尿酸も除去されますが、尿酸値が高いと動脈硬化が進んで心血管疾患になるリスクも上がります。
さらに、透析患者さんでは尿酸値は高いだけでなく、実は低すぎてもよくないです。今回は、透析患者さんが知っておきたい尿酸値について詳しくみていきましょう。
尿酸値とは
尿酸値は血液中の尿酸の濃度です。尿酸値が高くなると痛風だけでなく、腎臓機能にも影響を及ぼします。
尿酸と尿酸値
プリン体を多く含むビールや魚の干物などを食べ過ぎると、尿酸値が上がり痛風になることは一般的にもよく知られています。尿酸は、プリン体が身体の中で分解されて老廃物となったものです。プリン体は私たちが口にするものに含まれているほかに、身体の中にも存在しています。
身体の細胞の中にある核酸(DNA、RNA)は主にプリン体で構成されており、古くなった細胞が分解されるときに尿酸ができます。私たちの身体を動かすためのエネルギーの源である物質(ATP)にもプリン体が含まれていて、エネルギー代謝の過程で分解され、尿酸ができます。
食べたものに含まれるプリン体や身体の中にあるプリン体が分解されてできた尿酸の血液中の濃度が尿酸値です。
尿酸値が身体に及ぼす影響
尿酸値が高くなると、尿酸が結晶となって身体に溜まります。溜まる場所が足の親指の関節だと痛風、尿路だと尿路結石、腎臓だと腎結石になります。
痛風腎は腎結石から炎症が起こり、腎臓のはたらきが悪くなった状態です。腎不全まで進行すると透析が必要となります。高血圧や高血糖、脂質異常症、肥満などの生活習慣病も合併しやすくなります。
透析患者さんと尿酸値の関係
一般的には、尿酸値が高い人は痛風、尿路結石、腎結石、痛風腎になりやすく、慢性腎臓病などを合併しやすいので、尿酸値を下げる方が良いとされています。
透析によって身体の中にある尿酸が除去される透析患者さんの場合も、同じことが言えるのでしょうか?
血液透析患者さんは尿酸値が高すぎても低すぎても死亡率が高くなる
血液透析患者さんでは、尿酸値が低すぎると全死亡率と脳卒中・心筋梗塞などの心血管疾患での死亡率が高くなるという報告があります。
高尿酸血症を合併している透析患者さんの経過をよくするためには高尿酸血症の治療を行うことが必要ですが、尿酸値が低くなりすぎてしまうと死亡率が高くなります。特に、高齢者でその傾向はみられやすくなります。
参考文献:菅野直希ほか 日本の維持血液透析患者において血清尿酸値が低いほど全死亡および心血管イベントによる死亡のリスクが増加する
尿酸値の急低下と痛風発作
痛風発作は、尿酸値が急激に下がると起こりやすくなります。透析では尿酸が取り除かれるので尿酸値が急激に低下しますが、透析患者さんは透析を始めてからの方が痛風発作の頻度は少なくなることがわかっています。
ただし、体内に溜められている尿酸量が多いと、痛風発作が透析の度にみられる透析患者さんもいらっしゃいます。
尿酸値の基準値
尿酸値は血清尿酸値とも言われます。尿酸値の基準値は、男女ともに7.0mg/dlまでで、尿酸値が7.0g/dl以上になると高尿酸血症、2.0mg/dl以下は低尿酸血症です。
血液検査をした時に、尿酸値の欄に書いてある基準範囲は健康な人の値を集計し、高い値と低い値のそれぞれ2.5%ずつを除いた95%を含む範囲の値です。臨床検査値の共用基準範囲は男性3.7~7.8mg/dL、女性2.6~5.5mg/dlと定められています。
まとめ
尿酸値が高くなった状態が続くと腎臓も悪くなり、心血管疾患も合併しやすくなります。高尿酸血症の透析患者さんは高尿酸血症の治療を行うことが大切ですが、尿酸値が低くなりすぎると死亡率が上がることも言われています。
プリン体を多く含むものを摂り過ぎないこと、食べ過ぎないこと、ウォーキングなどの有酸素運動を行うことなど生活習慣に気をつけて高尿酸血症の予防、治療を行いましょう。
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