慢性腎不全って?原因と治療法を詳しく解説
慢性腎不全という言われ方をしますが、具体的にどのような状態になるのかわかりにくいですよね。慢性腎不全はいろいろな腎臓の病気や高血圧などが原因で、腎臓の機能がだんだんと低下していき、正常の30%以下まで腎臓の機能が低下してしまった状態のことを指します。
慢性腎不全について詳しく理解し、正しい治療を受けることが大切です。
慢性腎不全とは
慢性腎不全とは、腎臓の機能が数か月から数十年かけて徐々に低下していき、腎臓のはたらきが正常の30%以下になった状態です。
慢性腎不全では、悪くなった腎臓の機能が良くなることはありません。慢性腎不全が進行し、腎臓のはたらきが正常の10%未満となる末期腎不全になると命に関わる状態となり、透析や腎移植が必要となります。末期になるまで自覚症状がほとんど見られないのが特徴です。
慢性腎不全の原因
慢性腎不全は次のような腎臓の病気や病態が原因となります。
- ・慢性糸球体腎炎(腎臓の糸球体が主に障害され、長期間にわたってタンパク尿や血尿が続く)
- ・糖尿病性腎症(糖尿病による腎機能の低下)
- ・間質性腎炎(糸球体や尿細管を取りまく組織である間質が炎症を起こし、線維化して、腎機能の低下がみられる)
- ・高血圧
慢性腎不全の主な症状
慢性腎不全では次のような症状が主にみられます。
慢性腎不全初期にみられる症状
- ・夜の尿の量が増える
- ・トイレに行く回数が増える
- ・尿の量が減る
- ・尿の色が薄くなる
- ・倦怠感
- ・疲労感
- ・貧血
腎機能の低下が進むとみられる尿毒症の症状
- ・吐き気
- ・食欲不振
- ・頭痛
- ・かゆみ
- ・息切れ
- ・動悸
- ・皮膚の色素沈着(皮膚が黒ずむ)
- ・呼吸困難
- ・高血圧
- ・感覚がなくなる
- ・進行すると意識障害、けいれん
主な合併症
- ・骨がもろくなる、骨折しやすくなる
- ・手足のしびれ
- ・アシドーシス(体内が酸性に傾く)
- ・高カリウム血症
- ・心不全
慢性腎不全の治療法
慢性腎不全になると、悪くなった腎臓の機能が戻ることはありません。慢性腎不全の治療の目的は慢性腎不全の進行を予防して、末期腎不全になることを遅らせることです。
慢性腎不全の治療では、薬物療法、食事療法とともに、日常生活においても腎臓に負担をかけないように注意します。慢性腎臓病の原因となっている病気(原疾患)の治療も行います。
薬物療法
腎機能の低下による症状や合併症の症状によって、血圧、血糖、血中脂質のコントロールや、貧血や心不全、高カリウム血症、アシドーシスなどの合併症への薬物治療を行います。
食事療法
食事療法では、塩分、タンパク質、カリウム、リンの制限、適切なカロリー摂取、水分管理を基本とします。
原疾患の治療/合併症の予防
慢性腎臓病の原因となっている糖尿病や高血圧の治療や、慢性腎不全にともなってみられる高カリウム血症や心不全、肺水腫、アシドーシス、貧血などの合併症の予防を行います。
日常生活上の注意
- ・腎臓への負担を軽減するために激しい運動は避ける
- ・体重管理、肥満の場合は減量
- ・禁煙
- ・適度な運動
- ・過労やストレスを避ける
- ・感染予防
- ・脱水予防
末期腎不全の治療
腎不全になると透析か腎移植が必要となります。
透析
透析では、腎機能の低下によって血中に溜まった老廃物や、余分な水分を取り除きます。
血液透析は動脈と静脈をつないで太くした血管から血液を抜き、機械で血液をきれいにしてから再び体内に戻します。腹膜透析では、お腹の中に透析液を入れ、腹膜を通して身体の中の余分な老廃物や水分を取り除きます。
腎移植
腎臓移植はドナーの腎臓を移植する方法で、移植後は健常な人とほとんど同じ生活が送れるようになります。腎移植後は免疫抑制剤の服用を始め、適切な管理を継続する必要があります。
慢性腎不全の検査
慢性腎不全の検査には、血液検査、尿検査、超音波検査などがあります。
血液検査
腎機能が低下すると尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン(S-Cr)、尿酸の値が高くなります。
尿検査
尿検査で、タンパク尿、血尿、糖の異常などがみられます。
その他の検査
腎臓の形・血管の異常の有無を確認するために超音波検査や、腎臓の機能低下が認められた場合に、より詳しく検査するために組織検査を行うこともあります。
まとめ
慢性腎不全の原因となる腎臓の病気はさまざまです。慢性腎不全では失われた腎臓の機能は回復することはなく、徐々に腎臓の機能低下は進んでいきます。慢性腎不全の状態からさらに機能低下が進み、末期腎不全にまで至ると、透析や腎移植が必要になります。
慢性腎不全を予防し進行を防ぐためには、日々の生活での注意や食事療法、薬物療法を続けていく必要があります。腎機能の低下の早期発見のために、定期的に血液検査や尿検査を受け、腎臓に負担をかけない生活習慣を心がけましょう。
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