透析と心臓の密接な関係!突然死を避けるために知っておきたいこと
透析患者さんは、もともと持っている糖尿病や高血圧などの持病や透析による影響で心臓に負担がかかりやすい状態にあります。
透析患者さんが突然死を起こす割合や、突然死の中でも多くみられる心臓突然死、心臓ケアについて、研究報告やデータを交えてみていきましょう。
透析患者さんは突然死することはあるの?
突然死とは急に死亡することで、具体的には症状が発症してから1時間以内に死亡する瞬間死、または症状発症から24時間以内に死亡する場合を言います。
透析患者さんの突然死の割合が多いことを示す国内の研究報告がいくつかあります。
血液透析患者の約2割が心臓突然死
2010年に血液透析患者を対象としたコホート研究では、成人血液透析患者の死因のうち、約2割が心臓突然死であったとの報告があります。心臓突然死で亡くなった方の半数以上は予測不可能であった死亡を目撃されることなく、発見までに時間を要したとあります。
2012年には血液透析患者は慢性腎臓病ではない人と比べる心臓突然死の発症頻度が25~130倍高いとという報告もあります。
2019年には血液透析患者の10年間の死因を検討すると、心血管疾患が36%と最も多く、心血管疾患の中でも原因不明の突然死が一番多いという報告があります。
透析患者さんの死因のうちの約2割は突然死であり、このことからも慢性腎臓病を患っていない人に比べて、突然死の頻度はかなり高いことがわかります。
参考文献1:日経メディカル 血液透析患者の死因は2割が心臓突然死2010/02/08
参考文献2:長谷弘記 慢性腎疾患(不全)と不整脈:血液透析患者の不整脈管理を含む 血液透析患者における心臓突然死と不整脈
突然死の多くは「心臓突然死」
先ほどの3つの研究報告でも示されていたように、透析患者さんの突然死の多くは心臓突然死です。心臓突然死は、心室細動という致死的な不整脈によって心臓がけいれんし、心臓から血液を送り出せない状態となって死に至ります。
心臓突然死の原因は、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの心臓病によって起こります。血管内腔が狭くなる狭心症や血管が詰まる心筋梗塞は、心臓に酸素と栄養を運ぶ冠状動脈の動脈硬化によって起こります。
わが国の慢性透析療法の現況(2018年12月31日現在)の透析患者の死亡原因をみると、心不全が最も多く、心筋梗塞を合わせると心臓病での死因は27.1%を占めます。動脈硬化から起こる脳血管障害も合わせると心臓血管疾患での死因は33.1%となり、透析患者さんの死因の約3割を占めています。
参考文献1:一般社団法人 日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況(2018年12月31日現在)
透析をスタートしたら心臓のケアも重要
腎臓と心臓はお互いに影響し合っており、腎臓の機能が低下すると、心臓の機能が低下することが分かっています。そのため、透析患者さんは腎臓の機能だけでなく、心臓の機能にも目を向けていく必要があります。
透析患者さんは、腎臓の機能低下によって身体の中の余分な水分を十分に排泄することができなくなるため、体液量が増えて心臓に負担がかかります。
それに加えて、透析患者さんの39.0%の人が糖尿病性腎症が原因で透析が必要となっており、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を合併しています。生活習慣病を併せ持っていると、動脈硬化や動脈硬化から起こる狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を抱えやすくなり、心臓の機能も低下しやすくなります。
透析患者さんは心臓に酸素や栄養を運ぶ冠状動脈に石灰化が起こり、血管が弾力を失って硬くなり、動脈硬化が進んで虚血性心疾患の原因となることもあります。透析によって起こる心筋症が心不全に影響していることも考えられています。
動脈硬化は自覚症状がない場合も多く、気づかないうちに心不全や心筋梗塞を起こすリスクが高くなります。透析患者さんは、定期的に心電図や新エコー、心筋シンチグラフィなどの心臓の検査を受けて状態を確認し、心臓の機能にも目を向けて、少しでも心臓突然死のリスクを減らすことが大切です。
参考文献:一般社団法人 日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況(2018年12月31日現在)
まとめ
透析患者さんの死因は、心不全と心筋梗塞を合わせた心臓病が約3割を占めます。透析患者さんは自覚症状のないまま動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患となることも多いので注意が必要です。
腎臓の機能が低下すると心臓への負担が増し、心臓のはたらきも悪くなります。透析患者さんは腎臓の機能が低下すると、心臓のはたらきも悪くなりやすいということを知っておき、定期的に心臓の検査を受けて心臓突然死から自分の命を守りましょう。
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