災害に備えよう!透析患者さんが準備しておきたい3つのこと
災害が起こった際に透析治療を受けていた場合や透析患者さんが災害に巻き込まれた場合、どのようなことに注意すれば良いでしょう?
また、災害後には、透析治療を充分に受けることができない可能性があります。
今回は、災害が起こった際の対処法や災害前に透析患者さんが準備しておきたいことについて、詳しくみていきましょう。
透析治療中に災害が起きたら
もしも透析治療中に災害が起きたら、まずは冷静にご自身の身を守る行動をとりましょう。
透析治療中に災害が起こった場合のポイントは3つあります。
透析回路を握って待ちましょう
透析治療中に災害が起きたら、透析の針が抜けないように透析をしている手で透析回路をしっかりと握り、落下物から頭部を守るために毛布や布団などを頭にかぶります。テレビや棚など、落ちてくる可能性のあるものからできるだけ身体を遠ざけるようにしましょう。
揺れがおさまるまで安全な場所で待ちましょう
透析をしていない方の手でベッド柵につかまり、揺れがおさまるまで安全な場所でそのまま待ちます。立ち上がってしまうと針が抜けて大出血を起こす危険があるので、揺れている間はベッドで寝た姿勢でとどまります。
揺れがおさまったら避難しましょう
揺れがおさまってから透析室のスタッフの指示に従い、落ち着いて行動します。透析治療を続行するか中止するかについてもスタッフの指示に従いましょう。
施設や状況によっては、透析患者さん自身が透析回路からの離脱を行う必要があります。緊急離脱セットが用意されている場合には、いざというときに対応できるように、使用方法を確認しておくようにしましょう。
参考記事:災害時について
透析患者さんが災害に備えておきたい準備
自分の生命を守るためには、何よりも災害前の備えが大切です。
かかりつけの透析医療機関が被災して透析治療を受けられないことや、数日間透析治療を受けられない可能性があります。
災害前に備えておきたい準備は次の3つです。
- 1.透析治療を安全に受けるための情報や資料
- 2.薬や非常食・持ち出し品の準備
- 3.日頃から食事内容に気をつけておく
災害後は、しばらく透析治療を受けられない可能性があります。
かかりつけの医療機関で透析治療を受けられないときにも、ほか施設で安全に治療を受けられるために、必要な資料を準備しておきましょう。
透析情報カード
通院している病院の連絡先・透析条件・ドライウェイト・穿刺部位・薬剤アレルギーの有無などの情報が記載された透析情報カードを、災害時にもすぐに持ち出せるように避難用具の中に用意しておきましょう。
また、透析情報カードの内容は自分でも把握しておき、万が一カードを出すことができないというときにも透析に関する基本情報を自分で言えるようにしておきましょう。
保険証、受給者証(身体障害者手帳、特定疾病療養証)のコピー
保険証や受給者証は災害時でもすぐに出せるところに保管しておきましょう。
また、保険証、受給者証のコピーを避難用品の中に入れておくと良いでしょう。
お薬手帳
飲んでいる薬の情報や中止すると危険な薬の情報も、お薬手帳に記載しておきましょう。
お薬手帳の内容もコピーして避難用品の中に入れておくことをおすすめします。
薬や非常食・持ち出し品の準備
透析患者さんは一般的な災害時の持ち出し品に加えて、いつも飲んでいる薬と、カリウムや塩分、たんぱく質の量に配慮した非常食も避難用品の中に入れておきましょう。
薬(カリウム吸着薬、降圧薬、インスリン、ワルファリン、心臓疾患の薬など)
普段服用しているお薬の中には、中止すると身体に影響が出るものもあります。災害時はすぐに薬を受け取れないこともあるので、普段飲んでいる薬は数日分常備しておくようにしましょう。
非常食・透析食
非常食には、カリウムや塩分・たんぱく質を摂り過ぎずに必要なカロリーを摂取できる非常食がおすすめです。
アルファ米、パン、乾パン、無塩クラッカー、カロリーメイトブロック、氷砂糖、マシュマロ、低塩の缶詰のおかず、透析食のレトルト食品や菓子類を用意しておきましょう。
その他持ち出し品として用意しておくもの
- ・飲料水(透析患者さんは1日750ml程度が目安)
- ・地域の透析治療を受けられる病院の情報、地図
- ・乾電池で作動するAM/FMラジオ
- ・10円玉(公衆電話代金)
参考記事:災害時に備えよう!!
普段から食事内容に気をつけておく
災害時に十分な人数の透析治療を行う環境が整わなかった場合には、リスクの高い方、最期に透析治療をした時から時間がたっている方から優先して透析治療が行われます。本来の透析スケジュールで透析を受けられない場合や透析治療時間を短縮しなければならない場合も出てきます。
万が一そのような状況になったときでも、日頃から水分や塩分、カリウムを摂り過ぎないことに気をつけて食事をしていれば、1~2日は切り抜けることができる場合もあります。カリウムや塩分の多い食品も日頃から把握しておくようにしましょう。
避難所での食事の注意点
避難所での食事は水、ジュース、パン、おにぎりなどの非常食が中心です。市販の品物も品薄になり、透析患者さんに適した食事を選ぶことは難しくなります。
避難所での食事の注意点
カロリーはしっかりとって、カリウムや塩分の少ない次のような食品を食べるようにしましょう。
- ・白米
- ・おかゆ
- ・乾パン
- ・ビスケット
- ・飴・氷砂糖
- ・マシュマロ
- ・透析患者さん向け非常食やたんぱく調整食品
配給される食事の注意点
配給される食事は、気をつけないと塩分やリン・水分過多になりやすいです。以下のような点に気をつけて食べましょう。
- ・おにぎりは、中の具の塩分が高いので残すようにする
- ・いなりずし、海苔巻きは塩分が高いので避けるようにする
- ・弁当はたんぱく質と塩分の調節のためにおかずを残す、漬物やつくだ煮は食べない、しょうゆやソースなどの調味料をかけない
- ・パンは種類によって塩分やカリウムが高いものがあるため、食べ過ぎないようにする
- ・水分は我慢しすぎもよくありませんが、透析治療を十分に受けられない可能性もあるので、普段の2/3程度にする
透析患者さんが避けたい食品
特に以下の食品は、塩分やカリウムが高いので透析患者さんは避けるようにしましょう。
- ・いなりずし・巻きずし
- ・果物・ドライフルーツ
- ・梅干し・漬物・つくだ煮
- ・チョコレート
- ・黒砂糖入りのお菓子
- ・コーヒー
- ・お茶
- ・牛乳
- ・野菜ジュース
参考記事:透析患者さまの防災ハンドブック
災害に遭う前に避難所の対応や支援透析を調べておこう
いつもの透析治療が受けられない場合に利用できる、透析を受けられる支援施設や病院・避難施設を調べておきましょう。
調べる施設は、自宅や避難先・職場の近くなどで数箇所調べておくことをおすすめします。
また、かかりつけの透析医療機関が災害時に連携する医療機関を決めている場合もあるので、併せて確認しておきましょう。
災害時に情報の入手できるネットワーク・ラジオを調べておこう
災害時の透析についての情報を得られる入手先を事前にチェックしておきましょう。
詳しい情報の入手先については、お住いの都道府県・市町村の行政機関に直接問い合わせてみるかHPで確認するようにしましょう。
そのほか、以下のようなサービスやネットワークがるので、参考にしてみてください。
- ・日本透析医会災害時情報ネットワーク
- ・東京都区部災害時透析医療ネットワーク
- ・ラジオ・インターネット・テレビからの情報
- 災害用伝言サービス(透析医療機関の被災状況や対応方法を確認できる)
東京都福祉保健局の出している「透析患者用マニュアル」には、災害時に必要な情報が掲載されており、ご自身で避難所などの情報を書き込める箇所も用意されています。以下よりダウンロードできますので、こちらもぜひ活用して災害に備えましょう。
参考記事:透析患者用マニュアル
まとめ
災害はいつ起こるかわかりません。事前に備えがあれば、いざというときにも落ち着いた行動がとりやすくなります。
特に透析患者さんは、透析治療を受けるために必要な情報と薬をそろえておくこと、かかりつけの透析医療機関で透析治療が受けられなくなった場合に代わりとなる透析医療機関の情報収集をしておくことがとても重要です。
日頃から食事内容に気をつけて、カリウムや塩分、たんぱく質の高い食品について知っていることも、透析治療を十分に受けることが難しい災害時には有用です。かかりつけの透析医療機関にも、一度、災害時の対応について確認しておきましょう。
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