透析時間は長い方が良い?意外と知らない長生きとの関係
一般的な血液透析は、週3回1回4時間のスケジュールですが、それよりも透析時間が短いと死亡リスクが高くなり、反対に透析時間が長いと生命予後が良いことがわかっています。
週18時間以上の透析を行う長時間透析のメリット、デメリットについても説明していきます。透析時間による身体や生活への影響について一緒に学んでいきましょう。
透析時間は長いほど良いの?
一般的な透析頻度は「週3回4時間以上」ですが、「週3回6時間以上」、または、「1日おきに5時間以上」といったスケジュールで週18時間以上の透析治療を行う長時間透析や、夜間寝ている時間に7~8時間かけて透析を行うオーバーナイト透析など、長い時間をかけて行う透析治療もあります。
週3回4時間以上の透析治療で、1日24時間働き続ける腎臓のはたらきを補おうとすると、どうしても身体への負担が出やすくなります。
一方、長時間かけて行う透析では、4時間透析と比べて時間をかけて腎臓のはたらきを補うことができ、身体への負担がかかりにくいなどのメリットがあります。
長時間透析のメリット
長時間かけて行う透析のメリットとして、以下のことが挙げられます。
- ・一般的な4時間の透析に比べて、十分に老廃物の除去や除水が行える
- ・十分に老廃物や余分な水を排出でき、身体にとって必要な栄養は残るので食事制限が軽減できる
- ・無理のないドライウエイトの設定で除水が行える
- ・急激な血圧の低下が予防でき、血圧が安定しやすい
- ・心機能の改善が得られる
- ・身体への負担が軽減できるので、透析時に起こりやすい頭痛やかゆみ、吐き気などの副作用が起こりにくい
- ・高リン血症や高血圧、腎性貧血が起こりにくく、リン吸着剤や降圧薬、貧血の治療の内服を減少できる
- ・透析終了後も疲れが出にくい
- ・生活の質の向上につながる
長時間透析のデメリット
一方、長時間透析のデメリットとしては次のようなことがあります。個人の体力的な問題や時間的な制約から、誰でも選択できる透析方法ではありません。
- ・長時間の透析に体力的に耐えられない場合は、長時間透析を行えない
- ・ベッドでの拘束時間が4時間透析よりも長くなるため、仕事や家庭生活への時間的な制約がある
- ・認知症を伴っている場合は、拘束時間が長いがゆえに抜針のリスクが高くなる
参考記事1:長時間透析研究会
参考記事2:日本透析医学会 維持血液透析ガイドライン
透析時間が短いほど死亡リスクが高くなる
透析時間と死亡リスクとの関係についての研究は国内外でたくさんあり、国内では透析時間が4時間~4.5時間未満よりも短い患者群で死亡リスクが高いという報告や、透析時間が4時間の患者に比べ3.5時間未満では死亡リスクが2倍以上高くなるという報告があります。
海外では、透析時間が4時間未満の患者は4時間以上の患者に比べて死亡リスクが高いという報告などがあります。
短い透析時間で死亡リスクが高くなるのは、除去できる老廃物や水が不足すること、栄養状態が不良となりやすいことなどが影響すると考えられています。
透析時間が短いと死亡リスクが高くなるのは、短時間の透析治療しか受けられない状態になると、死亡リスクが高くなるという見方でも捉えられています。
参考記事1:鈴木一之ほか 血液透析条件・透析量と生命予後-日本透析医学会の統計調査結果から- 透析開始43(7)
参考記事2:両国東口クリニック
透析時間と生命予後について
維持血液透析ガイドラインによると、「透析時間は4時間以上を推奨する」、「短時間高効率ではなく、透析時間を延長して透析量を増大することで、死亡リスクが低下する可能性が示唆されている」とあります。
また、週3回で1回4~4.5時間の透析では、1回4時間の透析よりも短い透析時間では死亡リスクが高くなり、1回4時間よりも透析時間が長いほど死亡リスクが低くなると報告されています。
血液透析患者の治療方法や予後についての国際的調査Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOOPS)においても、透析時間が4時間半まででは透析時間が長いほど死亡リスクが低くなり、日本は欧米に比べて、長い透析時間での死亡リスクの低下が顕著にみられることも報告されています。
参考記事:日本透析医学会 維持血液透析ガイドライン
まとめ
4時間未満の透析に比べて、4時間以上の透析では死亡リスクが軽減し、短い透析時間よりも良いとされています。長時間の透析においても血圧が安定しやすいなど、透析中の副作用が起こりにくく、身体への負担が軽減されることや死亡リスクが低くなることが報告されています。
長時間の透析は短い透析時間に比べて良い影響がありますが、時間的な制約が生じることや個人の体力的な問題、認知症があると抜針のリスクがあることなどから、全ての人に適応できるわけではありません。
身体の状態や食事や水分量などの自己管理の状態、生活スタイルなどから総合的にみて、十分な透析治療と生活の質の維持・向上が望める透析スタイルを主治医とよく相談することをおすすめします。
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