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2019年10月02日

小児透析って?透析治療への考え方と治療法を知ろう

小児透析は、大人の透析治療とは原因となる疾患や透析の選択方法、食事療法などが異なります。

今回は小児透析はどのような病気が原因で行われることがあるのか、小児透析の種類とそれぞれの治療のメリット・デメリット、小児慢性腎不全での食事療法について詳しく学んでいきましょう。

     

小児透析とは

小児透析は、急性腎不全や慢性腎不全などで腎臓の機能が低下した場合に、末期腎不全への進行の予防、腎不全によって起こる心血管疾患や生活習慣病の予防、成長障害を予防する目的で行われます。

小児透析では、腎臓の状態や体調とともに、身体面、精神面の身体の発達・発育、栄養状態なども考慮して、その子供に応じた治療を行っていく必要があります。

参考文献1:一般社団法人 日本腎臓学会 小児CKDの治療

参考文献2:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター

     

小児透析

小児の腎不全の原因・症状

腎不全となり、透析治療が必要となる小児の病気には、先天性腎尿路異常(CAKUT)、巣状分節性糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、ネフロン癆(ろう)、遺伝性疾患、急速進行性腎炎症候群、IgA腎症、溶血性尿毒症症候群などがあります。

     

先天性腎尿路異常

腎臓が小さい低形成腎や腎臓の形成異常がある異形成腎などの腎臓の異常・尿路の異常が先天性にみられる病気が、小児の慢性腎不全の原因として最も多いです。

腎臓の機能の低下とともに、尿毒症を起こして全身の臓器にさまざまな症状がみられます。低身長や多飲、多尿の症状によって発見されることもありますが、検診や検尿、尿路感染症や他の病気の検査時に偶然発見されることもあります。

参考文献1:難病情報センター 先天性腎尿路異常(CAKUT)

参考文献2:服部元史 小児末期慢性腎不全診療の歩みと現況

巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)

巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、腎臓の糸球体の一部に硬化がみられる病気です。糸球体で老廃物をろ過する機能が障害されて、尿に多量のたんぱく質が漏れ出します。血液中のタンパク質が少なくなり、むくみが生じるネフローゼ症候群をきたします。

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群は、尿にタンパク質が多量に出て血液中のタンパク質が減少してむくみを生じる疾患で、多くは原因不明で起こります。

腎臓にほとんど異常が認められない微小変化型やメサンギウム増殖性糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症などはステロイド治療を行っても改善せず、腎不全に進行することがあります。むくみのほかに、急激な体重増加や尿量減少、身体のだるさなどがみられます。

ネフロン癆

腎臓にのう胞ができ、腎機能が低下していく病気です。多飲、多尿、成長障害、貧血などの症状がみられます。

遺伝性疾患

遺伝性疾患であるアルポート症候群では、慢性腎炎、難聴、白内障や円錐水晶体などの眼の合併症がみられます。幼少期に血尿で発見されることが多く、末期腎不全へとゆっくりと進行していきます。

急速進行性腎炎症候群

糸球体に炎症が起こり、数週間から数か月間の間に急速に腎機能が低下して、たんぱく尿や血尿、尿量減少がみられます。微熱、身体のだるさ、食欲低下などの全身症状もみられ、吐き気、息苦しい、血痰、血便、意識低下、皮膚の出血などが病気の進行とともに現れます。

IgA腎症

腎臓の糸球体の中にIgAというタンパクが沈着し、血尿やたんぱく尿がみられます。腎機能が低下しない場合もありますが、徐々に病気が進行して腎機能が低下し、腎不全や高血圧を合併することもあります。

溶血性尿毒症症候群

溶血性尿毒症症候群では血小板の減少、溶血性貧血(赤血球が壊されて生じる貧血)、急性腎不全が起こります。O-157の大腸菌感染による激しい腸炎にともなって起こりますが、O-157大腸菌感染に感染していなくても生じる場合もあります。

下痢、血便、出血斑、身体のだるさ、息切れ、むくみ、尿量減少、食欲低下、発熱などがみられ、腎臓の障害が強いときには透析治療が必要となります。いったん症状が落ち着いても症状を繰り返すこともあります。

O-157大腸菌以外の原因で起こる場合は脳症などを併発し、重症の経過をたどる傾向があります。

参考文献1:難病情報センター 非典型溶血性尿毒症症候群(指定難病109)

参考文献2:大阪府立急性期・総合医療センター腎臓・高血圧内科 溶血性尿毒症症候群(HUS)

その他

多発性嚢胞腎、閉塞性尿路疾患、間質性腎炎などや、腎臓以外の障害を主症状とする疾患で腎不全を伴うこともあります。

小児透析と病気の関係

小児透析の治療の種類と考え方

透析治療には血液透析と腹膜透析があります。大人の場合は血液透析を選択している方が多いですが、(血液透析68.2%、腹膜透析2.2%、2017年末)小児では、85~95%が腹膜透析を行っています。

血液透析

血液透析は、一度にたくさんの血液をとり出すために手術でシャントと呼ばれる太い血管をつくり、とり出した血液から余分な水分や老廃物を取り除いて再び身体に戻します。一般的には週3日、1回4時間の通院による透析治療が必要となります。

シャントをつくることができない小さい子どもでは、首の血管にカテーテルを通し、入院管理のもと透析治療を行います。

腹膜透析

自分の腹膜を利用して透析治療を行うのが腹膜透析です。腹腔内に透析液を満たして時間とともに血液中から透析液に出てきた余分な水分や老廃物を透析液とともに排出し、新しい透析液を腹腔内に満たすことを繰り返して透析を行います。小児の場合は夜間、寝ている間に自動的に透析液の入れ替えが可能な機器を使って行うAPDが行われます。

腹膜透析は長期間行うことで腹膜が硬くなって腸閉塞などを起こすリスクが高くなるため、一生継続することはできず、血液透析や腎移植を行う必要があります。

血液透析より腹膜透析が多い理由

小児透析で血液透析よりも腹膜透析が多いことには、以下の理由が挙げられます。

  • ・成長期にある小児は十分な栄養摂取が必要であるが、血液透析を行うために厳しい水分・食事制限を行うと発育・発達の妨げになることがある
  • ・血液透析でつくるシャントは、小児では大量出血や狭窄・閉塞などのリスクが高く、小さな子どもには、シャントをつくることができない
  • ・小児は大人に比べて体重当たりの身体の水分量が多く、食事制限も大人のように厳しく行えないので、血液透析一回での除水量が多くなり、身体への負担が大きくなる。合併症も出やすくなる
  • ・血液透析では、週3回、1日4時間、通院しての治療が必要となるので通学が難しくなる
  • ・腹膜透析は、長い時間をかけてゆっくりと除水するので身体への負担が少なく、日中に通学することも可能
  • ・血液透析に比べて腹膜透析では水分・食事制限の負担は少ない

参考文献1:日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)

小児透析と病気の関係

小児透析と食事療法

小児透析でも大人と同じように食事療法が必要となりますが、子どもの成長・発達を妨げないように適切な栄養摂取を行うことが必要です。日本人の食事摂取基準に応じてエネルギー、タンパク質は摂取することが推奨されています。食塩、水は病態によって不足する場合は補い、血圧管理が必要な場合は制限することがあります。

慢性腎不全では骨以外の部位の石灰化が起こったり骨がもろくなりやすいため、病気の進行度に合わせたリンの摂取量の管理が必要となります。

小児では透析治療が必要となる原因疾患もさまざまであり、病態や年齢、全身状態、成長・発達にあった治療、食事療法が必要です。その時期に応じて、食事療法について主治医に確認し、実行していくことが大切です。

まとめ

小児では先天性腎尿路異常や巣状分節性糸球体硬化症、そのほかさまざまな疾患から腎不全をきたして透析治療が必要となります。

成長過程にある小児では、成長・発達を妨げない治療が必要であり、身体への負担が少なく、社会生活との両立が図りやすい腹膜透析が選択されやすい傾向があります。食事療法も大人と同様に必要ですが、厳しい食事制限は成長・発達を妨げるので、個人のその時期に応じた栄養摂取を主治医に確認して実施することが大切です。


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