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2019年08月02日

お口の乾燥に要注意!透析患者さんの口腔ケアのポイント

透析患者さんは透析の影響によってお口が乾燥しやすい状態です。お口の乾燥は虫歯や歯周病などの口腔トラブルを引き起こしやすくします。

透析患者さんのお口が乾燥しやすい原因や口腔ケアのポイントについて学び、お口を健康な状態にキープできるようにしましょう。

     

透析患者さんはお口が乾燥しやすい

口腔乾燥に対する臨床的研究によると、「透析中の患者さん282名中、口が乾燥した経験のある人は82%で、そのうち約20%は口腔乾燥症と思われる。」との報告があります。

透析患者さんの多くが口の乾燥を自覚しており、中には常に口の乾燥がある口腔乾燥症(ドライマウス)の患者さんもいらっしゃいます。

     

透析患者さんの口が渇きやすい理由

ではなぜ、透析患者さんはお口が乾燥しやすいのでしょうか。

透析患者さんの口が渇きやすい理由としては、「唾液の分泌機能の低下」「からだの水分量の減少」「飲んでいる薬の影響」「原疾患の糖尿病」の影響などが考えられます。

     

唾液の分泌機能の低下

透析患者さんは長期の透析によって唾液腺の腺房細胞や導管の萎縮が起こり、唾液の分泌機能が低下しやすいです。唾液の分泌量の低下によって、お口の中が乾燥しやすくなります。

     

からだの水分量の減少

日常生活での水分摂取量の制限や透析による除水によって体内の水分量が減少し、口腔内の乾燥がみられます。

     

服薬の影響

透析患者さんが服用している利尿薬、降圧薬、その他の薬の副作用にょって口の渇きが生じることがあります。

     

原疾患が糖尿病の場合

透析患者さんが透析治療を行う原因となった疾患が糖尿病の場合、高血糖による脱水のために口渇が生じます。

     

参考文献:又賀泉 慢性腎不全透析療法中患者にみられる口腔乾燥に対する臨床的研究 日本口腔外科学会雑誌

透析治療と口腔ケア

透析患者さんが気をつけたい口腔トラブル

お口の中の乾燥によって、特に注意したいのが虫歯・歯周病といった口腔トラブルです。

     

虫歯

唾液が少なくなると歯の表面に汚れが残りやすく、口の中が虫歯になりやすい環境になります。透析患者さんの場合、時間的な理由や歯科クリニックに来院することが難しいといった理由から、虫歯を治療していないケースも多くみられます。

虫歯を放っておくと、細菌が全身を巡って身体に悪影響が及ぶこともあるため放置しないようにしましょう。

家や病院から近い歯科医院に定期的に通う・必要に応じて訪問歯科を利用することで虫歯をしっかり治療し、予防しましょう。

透析患者さんと虫歯の関係についてはこちらもご参考ください:透析患者さんは虫歯になりやすい?口腔ケアについて考えよう

     

歯周病

透析患者さんの場合、歯周病が重症化しやすいことがわかっています。

歯周病は動脈硬化、心筋梗塞や脳梗塞などの心臓血管疾患、糖尿病、慢性腎不全といった全身疾患にも影響があることがわかっています。

歯周病は別名「サイレントキラー」とも呼ばれており、症状が現れないまま重症化することも珍しくない病気です。

患者さままたは介護者さまによるセルフケアと、歯科クリニックでのプロフェッショナルケアによって、歯周病を重症化させないことが全身の健康のためにも重要です。

参考文献:毛利謙三 松岡哲平 透析患者の口腔環境と口腔ケア

お口の乾燥による虫歯

透析患者さんの口腔ケアのポイント

透析患者さんの口腔ケアでは、「口の中を清潔に保つこと」「口の中の乾燥を防いで保湿する」ことの2点が大切になってきます。

     

一日3回の歯磨き

まず何よりも、一日3回の歯磨きが口腔ケアの基本となります。

毎食後に歯磨きをして、歯垢や汚れをしっかり取り除きましょう。体調が悪い時でも、できるだけ夜寝る前には丁寧に歯磨きを行うようにしましょう。

口の中の粘膜を傷つけないように、歯ブラシの毛の硬さは「やわらかめ」または「ふつう」を選び、歯磨き剤には刺激の強いラウリル硫酸ナトリウムの入ったものは避けるようにしましょう。

義歯を清潔に保つ

義歯が清潔に保たれていなかったり、お口に合わないと歯周病やまわりの歯の虫歯の原因となります。

義歯は毎食後に歯ブラシや義歯専用のブラシで洗い、清潔に保つようにしましょう。義歯が傷つく可能性があるので、歯磨き剤はつけずに洗います。義歯洗浄剤を使用する場合は、義歯の破損を防ぐために説明書に従って使用しましょう。

また、義歯が合わない場合には、歯科医院への受診または訪問歯科を利用し義歯を調整してもらうようにしましょう。

     

お口の保湿

お口の乾燥を防ぐため、に唾液腺のマッサージを行って唾液の分泌を促しましょう。

また、マッサージ以外にもキリトール入りのガムをかむことや、口の体操や舌の体操、会話などで口を動かすことによっても唾液の分泌が促されます。

唾液腺マッサージは、次の3つをそれぞれ10回1セットとし、毎日習慣づけて行いましょう。

1.耳下腺のマッサージ

頬に人差し指から小指までの4本の指を当てて、奥歯のあたりから前へ向かって円を描くようにマッサージします。

2.顎下腺のマッサージ

頬からあごの輪郭の内側部分を5か所ほど、親指で押しながらたどります。

3.舌下腺のマッサージ

両手の親指で顎の下(舌の付け根あたり)を押します。

参考文献:厚生労働省 e-ヘルスネット 要介護高齢者の口腔ケア

お口の乾燥による虫歯

まとめ

透析患者さんは唾液の分泌機能の低下や身体の水分量の減少、服薬している薬の副作用、糖尿病の影響などで口が乾燥しやすくなっています。

お口を乾燥した状態にしておくと、どうしても虫歯や歯周病といった口腔内トラブルを招きやすくなってしまいます。

毎日の歯磨きや義歯の洗浄で口腔内を清潔に保ち、お口を保湿するためにこまめなマッサージ等を行うことで、虫歯や歯周病といった口腔トラブルからお口を守るようにしましょう。


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