食事も治療のひとつ!透析治療と食事で気をつけるべき4つのポイント
人工透析とは、弱った腎臓のはたらきを透析器で補う治療です。人工透析を受ける患者さんは、普段食べる食事も大切な治療の一環となります。
人工透析を行うだけでなく、毎日の塩分・水分量に気を付けることで腎臓に負担がかからないようにしてあげる必要があります。では、具体的にどのようなことに注意すれば良いのでしょうか?
今回は塩分・水分を少なくする具体的な方法と一緒に人工透析と食事のポイントについて詳しくみていきましょう。
どうして食事制限が必要なの?
腎臓は、過剰な水分や塩分・老廃物といった体に不必要なものを体外に排出するはたらきを持っています。腎臓の機能が低下すると老廃物が体内に溜まり、むくみや倦怠感といった不調が起こるようになります。すると腎臓にも負担がかかり、さらに腎臓が弱ってしまう恐れがあります。
なので腎臓疾患の患者さんは、できる限り老廃物を作らない・腎臓に負担をかけないように食事に気をつける必要があります。
人工透析を受けている人の場合も同様です。しかし、水分や塩分は摂り過ぎると害になりますが、まったく摂らないと生命を維持していくことができません。
体の維持に必要な栄養素は確実に摂りつつ、老廃物を作らないように量を調整するのが食事療法の基本なのです。
透析患者さんの食事における4つのポイント
では、人工透析時の食事はどんな部分に注意したらいいのか、細かく見ていきましょう。
ポイント1:水分
腎臓の機能が低下すると、尿が出にくくなります。そのため、摂った水分のほとんどが体内に溜まってしまうことになります。
人工透析を受けている人の場合、1日に摂取する水分量は1リットル程度に抑える必要があります。
ポイント2:塩分
機能が低下した腎臓は、塩分をうまく排出することもできなくなります。そのため塩分を摂り過ぎると、血圧の上昇やむくみといった症状を引き起こします。
さらに、のどが乾いて水分がほしくなるという悪循環を招くことも。塩分の摂取量は、1日6g以下に抑えましょう。
ポイント3:タンパク質
炭水化物や脂質はすべて消化吸収されるのに対して、タンパク質は消化吸収するときに老廃物が出てしまいます。そのため、必要以上にタンパク質を摂り過ぎると、腎臓に負担がかかることになります。
ポイント4:カロリー
カロリーが不足すると、体は筋肉など体内のタンパク質を壊してエネルギーに変えようとします。すると筋肉量が減るだけでなく、壊れたタンパク質から老廃物が出て腎臓に負担をかけてしまいます。
ただし糖尿病性腎症の場合は、カロリーを摂り過ぎると糖尿病が進行してしまうことも。体格や年齢にあった適切なカロリー量を摂取するようにしましょう。
そのほかにも、腎機能が低下するとカリウムやリンなどのミネラルが体内に溜まりやすくなります。そのため、カリウムやリンを多く含む食品は避けたほうが賢明です。
水分を摂り過ぎないためには
人工透析時の食事療法で一番大変なのは、水分の摂取量を抑えることだと思います。水分は飲料だけでなく、さまざまな食物にも含まれているため、食材にも注意を払わなければいけません。
水分量を調整するための具体的なポイントは、以下の通りです。
- 鍋物や汁物など、水分の多い料理は控える
- こんにゃく、寒天、ゼリーなど、水分の多い食材は控える
- わかめやひじき、乾麺などの乾物の水分も計算に入れる
- 醤油、ソース、マヨネーズなどの調味料の水分も計算に入れる
また、食事に含まれる水分を考えると、飲料として摂る水分は1日500ミリリットル程度にしておかなければいけません。「喉が渇いたら氷をなめる」「普段使っているコップや湯飲みを小さくする」といった工夫で、水分摂取量を抑えることができます。
減塩料理のポイント
塩分を控えるためには、調理方法を工夫をする必要があります。具体的なポイントとしては、以下のようなものが考えられます。
- ネギやショウガなどの香味野菜でアクセントをつける
- カレー粉やコショウなどの香辛料でアクセントをつける
- レモンやすだちなどの柑橘類の香りや酸味でアクセントをつける
- 塩や醤油をかけるのではなく、小皿に用意してつけてたべるようにする
かまぼこやちくわなどの練り製品や、ハムやソーセージなどの加工食品には、元から塩分が含まれているため避けるようにしましょう。
まとめ
人工透析を受けている患者さんには、食事療法が必須。しかし、水分や塩分を控えようとするあまり、体に必要な栄養素が不足してしまっては意味がありません。
なによりも大切なのは、すべての栄養素をバランスよく摂取すること。食事内容に気を配ることで、弱ってしまった腎臓と上手くつきあっていきましょう。
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