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2018年12月14日

【アルミニウムが関係】透析脳症について知ろう

アルミニウムと聞くとアルミ缶などの金属製品を思い浮かべる方が多いと思いますが、毎日私たちがアルミニウムを食べているということは知らない方が多いのではないでしょうか。

健康な人は、基準値を超えるアルミニウムを摂取しても健康に害はないとされていますが、透析患者の場合、アルミニウムの摂取量に注意が必要です。

透析患者さんがアルミニウムを摂りすぎた場合に起こる恐れのある透析脳症についてみていきましょう。

     

体内に取り込まれるアルミニウム

透析とアルミニウムの関係

アルミニウムは自然界に多く在している金属のひとつで、金属材料としても鉄の次に多く使われています。私たちは、飲み物や食べ物、空気や水などから毎日アルミニウムを摂取しています。

アルミニウムを含むもの

アルミニウムは以下のような食品、薬剤、添加物、調理器具などに含まれています。

一般的に、未加工食品よりも添加物を使用している菓子類などの加工食品からアルミニウムから摂取することが多いといわれています。

含まれているもの 多く含まれるもの(食品:100g摂取時のアルミニウム量)
飲み物
  • ウーロン茶(343ug)
  • 緑茶(133ug)
  • 炭酸飲料(22ug)
  • 牛乳(11ug)
  • 水道水(1.7ug)
食べ物
  • 海藻類(8500ug=8.5g)
  • 貝類(3800ug=3.8g)
  • 大豆・ごま(2475ug=2.475g)
  • 葉菜類(1200ug=1.2g)
  • 小麦(770ug)
  • きのこ(610ug)
  • 根菜類・穀物(250~260ug)
  • 肉・魚類(180~200ug)
  • 白米(120ug)
  • 卵(100ug)
食品添加物
  • ベーキングパウダー(一部の菓子パン、焼き菓子など:最大10mg)
  • 色止め剤(ナスやしその実の漬物など:520ug)
  • 形状安定剤(たこ、いか、くらげ、うになど:14~58ug)
  • 品質安定剤(芋、豆、れんこん、ごぼうなど)の煮物(50ug)
  • 着色料(食品全般)
調理器具 アルミを使った鍋などの調理器具やアルミ缶からの溶け出し
薬剤
  • 胃薬
  • 鎮痛剤
空気
  • 呼吸による吸収
     

身体の中に入ったアルミニウム

私たちは1日平均3.5mmgのアルミニウムを口にしていますが、そのうち約99%は体内に吸収されずに身体の外へと排泄されます。腸管から体内へ吸収された残り約1%のアルミニウムも腎臓を通って尿として排泄されます。

私たちの肺や骨、血液や脳に35~40mmgのアルミニウムが存在するといわれていますが、アルミニウムが体に対してどのような働きをしているのかは、はっきりとわかっていません。

     

透析脳症とアルミニウムの関係

透析脳症とアルミニウム

JECFA(食品の安全を評価する国際機関)では、アルミニウムを一生摂り続けても健康への悪影響がない1週間当たりの摂取量を体重1kg当たり2mgとしています。また、もしもこれ以上の量のアルミニウムを摂取したとしても、通常であれば尿として排泄されます。

しかし、腎臓機能障害がある人の場合、アルミニウムを尿として排泄することができず、アルミニウムが脳に蓄積して透析脳症を起こすことがあります。

     

透析脳症

血液透析患者の体内にアルミニウムが蓄積することで、大脳、小脳、脳幹、脊髄の広範囲にわたって変性が起こり、けいれんなどの運動障害や認知障害が生じる脳症を発症することが1972年ごろ明らかとなりました。

それ以降、透析液に水道水を使用しない対策がとられ、アルミニウムを取り除いた純水が使用されるようになりました。

アルミニウムを含む薬剤を服用しないようにする対策がとられたことで、血中アルミニウムの値が高値となる透析患者さんは以前よりも減少しました。

ですが、透析を受けてもアルミニウムが減少しない場合や、アルミニウムを含む薬剤を長期間飲んでいる場合は、血液中のアルミニウムが高値となりやすい傾向があります。脳中のアルミニウム量が増加することで、言語障害や異常行動・精神障害や発作といった症状が現れる場合を透析脳症といいます。

    

アルミニウムによる骨軟化症(アルミニウム骨症)

アルミニウムが蓄積することで起こるのは、透析脳症だけではありません。アルミニウムが骨に蓄積すると、骨が弱くなって骨折しやすくなり、骨の痛みや筋力低下がみられる骨軟化症になることもあります。

アルミニウムが原因で骨が弱くなった場外をアルミニウム骨症といいます。

 

透析脳症とアルツハイマー病の違い

透析脳症とアルツハイマー

透析脳症とアルツハイマー病は、症状・原因ともに異なります。

透析脳症はアルミニウムが脳に蓄積して生じますが、アルツハイマー病は、アミロイドβ蛋白が蓄積することで大脳皮質の変性が起こります。

   

アルツハイマー病とアルミニウムに関する見解

アルツハイマー病とアルミニウムの関連については、IPCS(国際化学物質安全性計画)がアルミニウムの健康上の影響を評価して作成した判定基準書を1997年にWHOからCRITERIA194として刊行されています。そこでは、以下のように述べられています。

  • アルツハイマー病の原因にアルミニウムが関連するという証拠がない
  • アルミニウムがアルツハイマー病を引き起こすことはない
  • 飲み水に含まれるアルミニウムが高値の場合にアルツハイマー病を発症しやすくなるという証拠はない

日本人研究者による論文では、アルミニウム脳症の患者の脳を調べても、アルツハイマー病の病理所見が認められなかったという報告があります。

また、アルツハイマー病のモデルマウスにアルミニウムを多量に摂取する群と摂取しない群とで10か月間比較した実験では、両群の間にアルツハイマー病でみられるアミロイドβやタウの蓄積の差は見られず、一日の摂取量を超えるアルミニウムを摂取していてもアルツハイマー病の原因にはならないだろうと推察されています。

このように、アルミニウム脳症とアルツハイマー病は同一のものではないかと誤解されがちですが、実は両者ともに関連性がないことがわかっています。

     

まとめ

私たちは、普段口にするものからアルミニウムを毎日摂取しています。健康な方であれば一日の摂取基準量を超えるアルミニウムを摂取していたとしても、体内にアルミニウムが蓄積せずに体外へ排出されますが、血液透析患者は体内にアルミニウムが蓄積しやすい傾向があります。

アルミニウムが脳や骨に蓄積することでアルミニウム脳症やアルミニウム骨症となることもあるので、アルミニウムの調理器具やアルミニウムが多く含まれる加工食品、市販薬は避けるようにしましょう。

     

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