世界一はどこ?国別の透析患者数を調べてみた
透析治療は慢性腎臓病の患者にとって命を支える重要な医療です。国ごとに透析患者数や治療環境は異なり、医療保険の充実度にも差があります。本記事では、主な国の透析患者数と治療費用について詳しく紹介し、透析患者が安心して海外旅行を楽しむための情報もお届けします。
国別の透析患者数
世界の主な国の透析患者数について説明します。
米国
2021年の血液透析患者数は46万2,539人、腹膜透析患者数は6万6,184人、在宅血液透析患者数は1万2,603人です。2001年から2019年まで血液透析患者数は増加傾向にありましたが、2019年の49万2,295人をピークに減少しています。在宅血液透析はほぼ横ばい、腹膜透析はやや増加傾向にあります。一方で、腎移植の患者数は増加傾向にあり、2019年の患者数は25万1,988人です。1)
・1)USRDS Incidence, Prevalence, Patient Characteristics, and Treatment Modalities
Highlights
中国
2021年の中国における透析患者数は88万人、血液透析患者数は約75万人です。透析医療保険の普及により透析施設も増え、年々透析患者数は増加傾向にあります。人口比あたりの透析患者数は米国や日本に比べて少ないようです。
・2)Bright 中国の血液透析市場の“いま”をレポート|保険制度から今後の動向まで
・3) NIPRO 国際事業戦略 グローバル経営の推進
インド
2019年時点の透析患者数は推定約18万人です。今後も透析施設の需要は増えることが見込まれています。4)
世界の透析患者、腎移植患者の新規発生率
世界の透析患者、腎移植患者の新規発生率が高い国から順にみていくと、1位メキシコ、2位台湾、3位米国、4位タイ、5位韓国、6位シンガポール、7位インドネシア、8位日本、9位イギリス、10位ポルトガルとなっています。5)
・5)中井 滋 透析医療の現状とこれから…日本と世界 図11 末期腎不全罹患率の国際比較 日本透析医会雑誌2023 38(1)
世界各国の透析費
世界各国のおもな国の透析費用について紹介します。
米国
1回あたりの基本料金は日本円にして(1ドル約140円)約33,015円に加えて、月4回の外来診察代が約43,000円かかります。
中国
上海では透析治療費の95~97.5%が医療保険でカバーされ、血液透析の費用は日本円で1回約6,500円です。上海以外の地域でも透析費用の90%前後が保険でカバーされます。
台湾
台湾の血液透析治療費用は約12,800円と決まっていますが、透析治療は免責対象のため、治療費用は無償になります。
タイ
保健が適用されますが、腎不全の治療は腹膜透析が優先され、腹膜透析で問題の起こった場合のみ、血液透析治療が保険適用となります。日本円で6,300円~6,500円程度の治療費です。
インド
保健制度が公務員と一部しか対象でなく、透析治療を受けられるのは公務員と富裕層に限られます。透析費用は日本円にして2,500円~5,000円です。
・5)中井 滋 透析医療の現状とこれから…日本と世界 図11 末期腎不全罹患率の国際比較 日本透析医会雑誌2023 38(1))
透析患者も海外旅行できます
透析患者の場合は旅行先で透析治療を受けられる施設の確保が必要です。海外の透析施設でも日本製の機器が使われていることも多く、日本で受けるのと同等の透析治療を受けられるようになっています。
海外旅行で透析治療を受ける場合は自費になります。国によって透析治療費用は異なり、1回の治療費用は約2~8万円かかります。複数回受ける場合は回数分必要になります。支払い方法も施設によって決まっているので事前に確認しなければなりません。6)
海外療養費還付制度によって、一度支払った透析治療費用を日本に帰ってから請求することで、治療費の還付も受けられます。
透析施設は現地で探すのが大変なため、事前に調べて予約を取っておきましょう。各国の透析事情に詳しい、透析治療の手配をしてくれる旅行会社を利用するのもよいでしょう。
透析患者の海外旅行についてはこちらの記事も参考にしてください。
まとめ
世界各国における透析患者数は米国、中国で多いですが、人口比でみると透析患者数が多いのはメキシコや台湾です。世界各国の透析治療費用は医療保険制度や適用範囲も国によって大きく異なります。海外旅行先で透析治療を受ける際には、現地での透析治療費用が必要になります。安心して海外旅行を楽しむためにも事前に現地の透析事情について十分に調べた上で予約をとり、無理のない旅行日程にしましょう。
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