透析患者の希望!腎移植を受けて活躍したプロスポーツ選手
腎移植を受けて活躍したスポーツ選手たちの経歴を紹介します。腎移植後もトレーニングに復帰し、大会などで成績を残している選手たちのエピソードは、透析患者に限らず多くの人にとって大きな希望となるでしょう。透析治療とスポーツの関係や透析患者にとってなじみの深いエリスロポエチンとオリンピックについても触れています。
透析治療とスポーツの関係
透析治療を受けながらのスポーツは可能ですが、スポーツで失う水分や塩分を補給しながら、水分・塩分の制限も行わなければならず、管理が難しい点があります。
また、腎機能が低下していると血液量が増加し、心臓に負担がかかりやすくなります。激しいトレーニングは体に負担をかけるため、計画的なトレーニングで過度の負担を避けることが重要です。さらに、シャントが損傷すると大量出血や感染のリスクがあるため、怪我にも十分注意する必要があります。
透析治療に替わる治療である腎移植は免疫抑制剤の服用が必要ですが、透析治療に比べると、水分管理やシャント管理などの制約が軽減されます。
腎移植を受けて活躍したプロスポーツ選手達
腎機能が著しく低下した場合の治療法として、透析治療のほかに腎移植があります。腎移植を受けて、活躍しているプロスポーツ選手を紹介します。
イバン・クラスニッチ
クロアチア国籍のフォワードの選手です。ゴールもアシストもできる選手として活躍し、ドイツ時代にはアシスト王に輝いたこともあります。2004年にはクロアチア代表となり、フランスやイングランド、ドイツのチームで活躍後、2013年に退団しました。ブレーメン時代に腎臓の病気がわかり、母から腎臓提供を受けて移植手術を行いますが、拒絶反応によって摘出します。その後、父親からの腎臓提供により再手術してプレーにも復帰しました。
アリエス・メリット
アリエス・メリットは、110mハードルのロンドンオリンピック金メダリストで、同種目の世界記録保持者です。2013年ごろから体調不良があり、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)と診断されました。その後、腎臓の機能は徐々に悪化し、2015年に姉から提供された腎臓の移植手術を受けました。
トレーニングを再開しましたが、腎臓の周囲に血腫ができ、再び手術を受けています。練習を再開後、インドアレースでは世界3位となり、2017年には世界陸上決勝の舞台に立ち、5位入賞も果たしました。
ショーン・エリオット
NBAで活躍した名選手で、当時の背番号32は永久欠番となっています。1999年にサンアントニオ・スパーズのメンバーとして優勝を経験後、巣状糸球体硬化症であることを公表し、兄から提供された腎臓の移植を受けました。2000年に復帰した後もプレーを続け、2001年のシーズンを最後に引退。2020年時点ではバスケットボールの解説者として活動しています。
そのほかにも、ラグビー選手のジョナ・ロムーやNBA選手のアロンゾ・モーニングも腎移植を受けて現役復帰した選手たちです。
・MediPress腎移植を受けて活躍したプロスポーツ選手たち 【1】
・MediPress腎移植を受けて活躍したプロスポーツ選手たち 【3】
・MediPress腎移植を受けて活躍したプロスポーツ選手たち【5】
腎臓病の薬エリスロポエチンとオリンピックの話
腎臓の機能が低下すると、赤血球を増加する作用があるエリスロポエチンの分泌量が低下して貧血になります。腎臓の機能低下による貧血の改善を目的に、透析治療を受けている多くの方がエリスロポエチンを服薬しています。
このエリスロポエチンはドーピングの禁止薬物でもあります。健康な体に使用すると、骨髄内で赤血球の産生が促進され、筋肉へ酸素が行き届きやすくなって持久力が向上するとされています。
実際に2020年東京オリンピック前のドーピング検査や世界的なマラソンや自転車競技でも選手のエリスロポエチンによるドーピングが発覚しています。ただし、エリスロポエチンのドーピング効果を検証した研究では、使用しても競技パフォーマンスに影響はないという結果がみられています。
まとめ
スポーツ選手にとって、透析治療を必要とする腎臓の病気は大きな試練となります。腎移植を受けて、その後のトレーニングを乗り越え、再びスポーツ界で活躍する選手たちは、透析患者だけでなく、多くの人々の希望と勇気となります。
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