透析患者は動脈硬化になりやすい?血管は自分で守りましょう
透析患者にとって動脈硬化は注意すべき合併症です。透析患者が動脈硬化になる原因は、一般的に知られている生活習慣のほかにも腎不全特有にみられるものもあります。透析患者にみられる動脈硬化の原因や動脈硬化の予防方法について知り、日々の生活でも予防を意識して血管を守りましょう。
動脈硬化とは
動脈硬化は通常、血管の内側にコレステロールや脂肪などがついて、血管の中が狭くなり、血液の流れが悪くなった状態です。進行すると、血の塊ができて血管が塞がったり、血管の内側の壁が厚くなって詰まったりします。このタイプの動脈硬化は粥状硬化と呼ばれます。
一度動脈硬化になると治ることはありません。治療しなければ血管の狭窄や閉塞が生じ、死亡原因の上位に入る心筋梗塞や心不全、狭心症、脳梗塞などの心血管疾患を引き起こします。
透析患者に動脈硬化がおこる理由
透析患者の動脈硬化には、粥状硬化のほかにも、腎不全でよくみられる中膜硬化、高血圧があるとみられやすい細動脈硬化があります。
・東京健生病院 透析治療に活用できる社会保障制度について
・江戸川区 特定疾病療養受療証について(人工透析を受ける方など)
・中四国エイズセンター 特定疾病療養(マル長)について
・善仁会グループ 透析を導入した後の医療費について
透析患者に起こる動脈硬化
中膜硬化は、血管壁の内膜・中膜・外膜の三層のうち、中膜に石灰化がみられる動脈硬化です。腎不全があると、比較的特徴的にみられます。血管は硬くなって柔軟さがなくなり、血流による負荷で傷つきやすくなっている状態です。
細動脈硬化は、血管壁の三層全体がもろくなる動脈硬化です。腎臓や脳などの細い動脈に起こりやすく、進行すると血管が破れて出血します。高血圧や糖尿病を長く患っている人に多くみられるタイプです。
透析患者の動脈硬化の原因
生活習慣、高血圧・糖尿病などの合併症のほか、透析患者におこる動脈硬化では、血液中のリン・カルシウムの濃度が原因となります。
体に吸収されたリンは腎臓から尿の中に排出され、調節されています。しかし、腎臓のはたらきが低下している透析患者では、尿へリンを排出する量が減り、血液中のリンの濃度が高くなります。
体の中のリンとカルシウムのバランスが崩れた結果、血管壁などでリンとカルシウムが結合して石灰化し、動脈硬化が起こります。
二次性副甲状腺機能亢進症、尿毒症、体液量の増加なども動脈硬化の進行に関与します。
・長寿リン.jp 透析患者さんの動脈硬化は、血管の石灰化が大きく関与
・長寿リン.jp 透析患者さんに起こる動脈硬化
・CKD における動脈硬化とその危険因子
透析患者は足に動脈硬化がおこりやすい?
透析患者では足の血管の動脈硬化が進んで、足の血流が悪くなる末梢動脈硬化症(閉塞性動脈硬化症を含む)がよくみられます。重症化して足先が腐り、黒くなる壊疽がおこると足を切断しなければなりません。
足の壊死は透析患者の中でも、とくに糖尿病を合併している人に多くみられます。糖尿病があると動脈硬化も進みやすく、足の血流不良を生じやすくなります。
末梢動脈硬化症の初期は無症状のことも多く、とくに、糖尿病があると感覚が鈍くなるので、血流が悪くなることでおこる足のしびれや痛みの症状にも気づきにくくなります。傷ができると一気に悪化するので本人や家族の観察の目が大切です。
・カネカメディックス 下肢閉塞性動脈硬化症について 動脈硬化とは?
・松並総合病院 透析合併症の予防と早期発見 その2「閉塞性動脈硬化症とフットケア」
・Medtronic 下肢閉塞性動脈硬化症とは?
動脈硬化は予防できる
動脈硬化は起こってしまうと元には戻せませんが、ならないように予防する、今以上に進行しないように予防することはできます。
動脈硬化になる原因は、加齢、高血圧、糖尿病、肥満、コレステロール、喫煙、運動不足などの生活習慣、リン・カルシウムのコントロール不良などです。
動脈硬化を予防する方法
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの合併症がある場合は治療をしっかりと行いましょう。喫煙している人は禁煙する、運動をして血流を良くする、食生活を見直すことが予防につながります。
食事は、卵や魚介類、乳製品、大豆製品や、インスタント食品、オレンジジュース、コーラ、トマトジュース、缶コーヒー、ビールなどのリンが多く含まれる食品の摂り過ぎに注意し、リンをコントロールしていきましょう。
・MediPress透析 リンが多く含まれている飲み物は何ですか?
・西狭山病院 透析のリンについて
・医療法人清陽会 ながけたより6月号 透析患者さんと動脈硬化
まとめ
一般的に、動脈硬化は食生活、肥満、喫煙、運動不足などの生活習慣が原因となりますが、透析患者ではリン・カルシウムのコントロールが原因となる動脈硬化がみられます。
そのため、禁煙や運動などの生活習慣の改善とともに、食生活でリンとカルシウムをコントロールすることが大切です。糖尿病や高血圧、脂質異常症などの病気がある場合は治療も継続して行っていきましょう。
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