なぜ、透析患者は体重管理が必要なのか?
透析患者は、なぜ体重管理が必要なのでしょうか。その理由を知り、毎日の水分、塩分の制限の重要性を確認しましょう。体重管理の際の指標となるドライウェイト(DW)と、次の透析日までの体重増加率についても説明します。
なぜ、透析患者は体重管理が必要なのか?
透析患者は透析と透析の間に体重が増えます。それは、脂肪がついて太ったのではなく、摂った水分を尿として体の外へ排出できないため、体の中にたまった水分の量だけ体重の増加につながっているのです。
体の中に必要以上に水分がたまると、血液の中にも水分が増え、多くなった血液を体の外へ排出しようと血圧を上げて心臓は頑張ります。その結果、高血圧となり、心臓や血管に負担がかかります。排出できなかった水分は、体のむくみ、胸水、腹水などとして現れ、息苦しさなどの症状もみられます。
高血圧から動脈硬化が進行すると、脳梗塞や心不全などの命にかかわる合併症の原因ともなります。血液は水分で薄まって貧血も起こしやすくなります。
さらに、体重が増えた分だけ透析で除水する必要があるため、透析中の血圧低下も招きます。体重管理は、透析中の血圧低下、貧血、脳梗塞、心不全の予防のために必要です。
ドライウェイト(DW)について
手動で行う場合
ドライウェイト(DW)は透析で除水が終わったときの目標体重です。透析で除水する水分量が多すぎず、少なすぎないように、体の中の水分量が適切に保てる状態をDWとして
透析治療を行います。体調や心胸比、むくみ、血圧、血液検査の値などの複数の指標を参考にしてDWは決定されます。
DWが適切な値よりも少ないと、本来除水すべき量よりも多くの水分を体から取り除くことになるため、透析治療のたびに脱水になり、血圧低下やショックも起こしやすく、心臓や体に負担がかかります。
DWが適切な値よりも多いと、本来除水すべき量を体から取り除くことができず、体の中に水分がたまったままとなって心臓へ負担をかけます。
たとえDWが適切であったとしても体重管理をしっかり行えておらず、体重の増加が大きく体にたまった水分が多ければ心臓に負担をかけます。また、除水する量が多くなるので血圧が低下しやすくなり、さらに心臓に負担をかけることになります。
透析治療時の体や心臓への負担を軽くし、体のよい状態を維持するためには透析体重が増えないように水分と塩分の制限を守り、体重管理をしっかりと行う必要があります。体重管理が適正にコントロールできていると血圧も安定しやすくなり、体にかかる負担が減って、生活の質も向上します。
体重増加率のガイドライン
維持血液透析ガイドラインでは、透析と透析の間が最大となる日の体重増加は6%未満が望ましいとあります。週3回の透析であれば、中2日が透析と透析の間が最大となり、体重増加率6%未満は体重50kgであれば3.0kg未満の体重増加です。
体重増加率については4.8%以上の体重増加は予後不良、3.5%が妥当など、さまざまな報告があります。
ガイドラインでは平均除水速度は15mL/kg/時以下が目標値とされおり、1回4時間の透析で15mL/kg/時以下の除水速度を守れば、除水できる量は体重の5%程度です。5%以上の体重増加がある場合は、4時間で無理に除水は行わずに透析時間の延長が推奨されています。
除水速度を上げずに4時間でDWを達成するとなると、体重増加率は5%以内におさめる必要があります。一般的には透析患者の体重増加率は、透析と透析の間が中1日は3%以内、中2日は5%以内と透析患者に指導されています。
・維持血液透析ガイドライン:血液透析導入 透析会誌 2013; 46(12): 1107-1155
・全腎協 透析治療を受けている方
まとめ
透析患者は体の水分を尿として排出しにくく、摂った水分量がそのまま体重増加として現れます。透析と透析の間で体重が必要以上に増加してしまうと、体の中の水分が増えて心臓に負担がかかり、心不全や脳梗塞などのリスクも高まります。
透析で除水しなければならない量も増え、血圧低下やショックも起こしやすくなります。血圧を安定させて生活の質を向上するためには、体重増加を3~5%以内におさえる体重管理が必要です。体重管理の必要性を確認し、毎日の水分、塩分制限を工夫して無理なく続けていきましょう。
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