透析治療で看護師さんがやっている「プライミング」について
透析治療では、安全に透析治療を始めるために重要なプライミングを看護師や臨床工学技士が行います。透析治療を開始前に実施するプライミングではどのようなことが行われているのか、手順や注意点もあわせて知っておきましょう。
透析治療のプライミングとは
血液透析におけるプライミングとは、ダイアライザ、血液回路、生理食塩水をセットして、透析治療を始めるための準備のことです。
プライミングは、次の目的のために行われます。
- ダイアライザ、血液回路の中の微細な塵などを洗浄する
- ダイアライザ、血液回路内の空気を抜いて、生理食塩水(透析液)を充填する
- ダイアライザ、血液回路の破損や不良がないかを確認する
プライミングは人の手で行う場合と、装置が自動で行ってくれる場合があります。最近は、多くの透析施設で、全自動で行える全自動透析装置が導入されています。
手動の場合は、ダイアライザと血液回路を接続し生理食塩水を充填しますが、全自動透析装置の場合は、生理食塩水の充填の操作は必要ありません。
全自動透析装置は生理食塩水の代わりに大量の透析液を使用して、装置が自動でダイアライザ内の不純物を洗浄してくれます。全自動は手動に比べて手順が少なく、プライミングにかかる時間を短縮できるので、看護師が透析患者の対応に時間をかけられる点がメリットです。
・透析装置の自動化の現状今後の課題(1) 透析会誌33 (4): 251~252, 200
・ときわ会 透析装置の全自動化へ
・日本透析医会 透析医療事故防止のための標準的透析操作マニュアル 10-11P
プライミングの手順
プライミングは、ダイアライザと血液回路の洗浄、充填を次の手順で行います。
手動で行う場合
- 生理食塩水、ダイアライザ、血液回路、鉗子、抗凝固剤を用意します。
- ダイアライザと血液回路を正しく接続します。
- 動脈側の血液回路に生理食塩水を充填し、ダイアライザの動脈側に接続します。静脈側の血液回路は、ダイアライザの静脈側に接続します。
- 動脈側ライン、ダイアライザ、静脈側ラインの順に生理食塩水を流します。ダイアライザと血液回路を洗浄して空気を抜きます。
- 洗浄用の生理食塩水を流したら、充填用の生理食塩水(透析液)でダイアライザと血液回路を満たします。
全自動で行う場合
- ダイアライザと血液回路をセットします。
- ダイアライザと透析装置を接続するカプラをセットして、装置を作動します。
- 透析装置が逆濾過透析液を使って、ダイアライザと血液回路の洗浄、充填を自動で行ってくれます。
・日本透析医会 透析医療事故防止のための標準的透析操作マニュアル 10-11P
・ときわ会 透析装置の全自動化へ
・トモスみとクリニック 人工透析のご案内
プライミングの注意点
プライミングを行う際には次の点に注意が必要です。
- 洗浄後、時間が経過すると汚染のリスクが高くなるため、透析開始直前に行います。
- 装置の破損や汚染がないかを確認してから開始します。
- 使用するダイアライザに間違いがないかを確認します。
- ダイアライザと血液回路を接続する際には、それぞれの接続部に鉗子や手が触れないように清潔操作で行います。
- ダイアライザと血液回路の位置、方向は正しく接続、セットします。
- 接続する際は空気の混入や血液の漏れを防ぐために、ゆるみがないようにしっかりと接続します。
- 全自動透析装置の場合、日本透析医学会制定の透析液の水質基準を守る必要があります。
- エンドトキシンや細菌の汚染がないように、エンドトキシン捕捉フィルタは少なくとも半年に1回は交換します。
・大館市立総合病院人工透析室 11P
・JMS個人用透析装置 JMS個人用透析装置 個人用透析装置 SD-300N
・日本集中治療教育研究会 腎機能代替療法Renal Replacement Therapy(RRT)(前編)総論・準備・プライミングまで
・旭化成ファーマ株式会社 末期腎不全
まとめ
透析治療を安全に開始するにあたって事前の準備であるプライミングは、なくてはならないものです。透析で使用するダイアライザ内の微細な塵などを洗浄し、透析装置やダイアライザ、血液回路に問題がないかを確認する工程です。
全自動のプライミングを採用している透析施設が多くなり、以前よりも人の手による操作は減りました。全自動の場合は、透析液の汚染がないように透析装置の管理や、セット時の清潔操作も重要です。プライミングがどのように行われ、管理されているかも透析施設選びの際の参考にしましょう。
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