カフ型カテーテルと人工透析。長期留置型カテーテルならではの注意点
カフ型カテーテルは、長期の留置が可能なカテーテルですが、長く利用するためには注意しなければならない点があります。カフ型カテーテルの概要やメリット、デメリット、注意点について確認しましょう。
カフ型カテーテルとは
シャントの代わりに血液の出入り口として体の中に入れる管がカフ型カテーテルです。皮膚の下で移動しないように、カフと呼ばれる弁がついた構造をしています。
カフのついていない非カフ型カテーテルは感染しやすく、一時的にしか使用できませんが、カフが皮下組織と癒着するカフ型カテーテルは感染しにくい仕様になっており、比較的長期間、体の中に入れておくことが可能です。
コヴィディエンジャパン株式会社 カフ型カテーテルとのこれから
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内野 敬ほか 血液透析用アクセスとしてのカフ型カテーテルの評価
カフ型カテーテルと人工透析
血管の荒廃、重度の心不全、認知症や四肢拘縮で針を抜いてしまうリスクがあるなどの理由でシャントを作成できない場合や、シャントを作成するまでの期間に一時的にカフ型カテーテルが用いられます。
わが国の慢性透析療法の現況(2017年12月31日現在)によると、カフ型カテーテルの使用率は男性0.9%、女性2.2%です。男女ともに加齢や透析歴が長くなるにつれて使用率が高くなる傾向にあります。1)
カフ型カテーテルの設置
一般的には、カテーテルを右胸から入れて、皮膚の下を通して首から血管の中へと挿入し、心臓の右心房まで通します。カテーテルの設置には手術、入院が必要です。
右胸からは血液を取り出す側と血液を戻す側に枝分かれしたカテーテルが皮膚の外へ出ている状態になります。個人によっては左胸の場合もあります。
カフ型カテーテルのメリット
透析の機械をカテーテルと直接つなぐため穿刺の必要がなく、透析中も両手が自由な状態です。心臓への負担が少ないこともメリットです。
1)第7章 バスキュラーアクセス わが国の慢性透析療法の現況(2017年12月31日現在)
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長期留置型なので管理はしっかりと
非カフ型カテーテルと比べると、カフ型カテーテルは感染しにくいですが、人工物を体の中に挿入するので、出口部分は感染を起こしやすく、詰まりやすいデメリットがあります。皮膚の外に出ているカテーテルに強い力が加わると、破損する場合もあります。早ければ2~3週間で使用できなくなることもあり、しっかりとした管理が必要です。
透析がある日は病院で消毒やチェックが行われますが、透析のない日は自宅でカテーテルの出口部分を消毒します。出口周囲の皮膚に異変がないか、カテーテルの破損がないか、毎日チェックを行いましょう。
カテーテル出口部分の消毒・観察
カテーテルの出口部分を、消毒液を浸した綿棒で消毒し、皮膚の赤み、痛み、出血、膿などがないか、カテーテルの破損がないかを観察します。消毒の前には手を洗い、清潔な手で消毒しましょう。
トラブル時の対応
感染がひどくなるとカテーテルの抜去が必要になります。早期の治療が大切ですので、出口部分の皮膚にトラブルが起こったら、早めに透析を受けている病院を受診しましょう。
カテーテルが破損して出血している場合は、カテーテルのクランプをしっかりと閉めます。クランプごと壊れている場合は、先端を輪ゴムやテープできつく縛り、清潔なガーゼなどで覆ってすぐに受診しましょう。
入浴時はどうする?
カフ型カテーテルを挿入している状態でも、シャワーや入浴は可能です。ただし、カテーテルが濡れたままの状態だと感染しやすくなるので、カテーテルに巻いたガーゼの部分から先端を防水テープで保護して入ります。
浴槽に入る際は、カテーテルがお湯につからないように注意しましょう。シャワー・入浴後は防水テープをはがして消毒を行います。
まとめ
カフ型カテーテルは長期の留置が可能で、透析でシャントが作成できない場合に用いられます。出口部分の感染や詰まりを起こしやすいため、長く利用するには消毒やシャワー・入浴時の保護などの管理が必要です。皮膚の異変やカテーテルの破損に早く対応できるように毎日観察を行い、トラブルがみられる場合は早めに受診しましょう。
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