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2022年06月15日

腎臓移植と人工透析、どっちが良い?腎臓移植のメリット・デメリットから考える

腎臓が悪くなったときの治療方法は、透析と腎臓移植のどっちが良いのでしょうか。それぞれの治療法の実際に行われている件数や、腎臓移植のメリット・デメリットを解説しています。どっちが良いかを考えていきましょう。

腎臓移植とは

腎臓の機能が低下した人が、ほかの人から腎臓をもらって移植する治療法です。親族の腎臓をもらって移植する生体腎移植と、心停止した人や脳死の人から腎臓をもらい、移植を行う献腎移植があります。

2019年では2,057例が腎移植を行っています。内訳は、生体腎移植1,827例、献腎移植230例で、約90%が生体腎移植です。慢性的なドナー不足の背景があり、献腎移植希望登録数12,505名に対し、献腎移植できた人は約2%となっています。1)

透析患者の人数は年々増加しています(2019年末は344,640例)が、献腎移植希望登録数の変化はみられません。1)

腎臓

・1)日本移植学会 2020臓器移植ファクトブック

腎臓移植のメリット・デメリット

腎臓移植にはさまざまなメリットがある一方でデメリットもあります。メリット・デメリットをそれぞれみていきましょう。

腎臓移植のメリット

腎臓移植を行うと透析をしなくてもよくなるので、透析による時間的な制約や厳しい食事・水分制限から解放されます。心筋梗塞や心不全、脳梗塞などの合併症が進行するリスクも透析に比べると低くなります。社会復帰しやすく、妊娠や出産も期待できるなど、生活の質が良くなる点がメリットです。

また、透析患者の10年生存率(2005年導入)35.9%2)に比べて、腎臓移植の10年生存率は献腎移植81.3%、生体腎移植92% 3)で平均余命も長くなります。

腎臓移植のデメリット

腎臓移植のデメリットは、腎臓の提供数が少なく、望んだ人全員が移植を受けられるわけではない点です。また、移植するには手術が必要であり、生体腎移植の場合は腎臓の提供者である親族も手術を受けなければなりません。

移植後は、拒絶反応を抑えるための免疫抑制剤を一生飲み続けなければならず、感染症、高血圧、糖尿病などの薬の副作用も伴います。副作用の予防・治療のために、食事制限が必要になることもあり、拒絶反応で腎臓の機能が低下した場合は、透析の再開も余儀なくされます。

・2)わが国の慢性透析療法の要約 6)年間粗死亡率と生存率
・3)日本移植学会 臓器移植Q&A

腎臓移植が受けられる条件

透析を受けている人、もしくは近々透析を開始する必要のある人で、全身感染症がないこと、症状が現れている活動性の肝炎がないこと、悪性腫瘍がないことが条件として挙げられています。

全身麻酔下での手術に耐えられる心臓や肺の状態であることも条件のひとつです。献腎移植の場合は、強い拒絶反応を避けるために腎臓提供者に対するリンパ球への抗体がない方が望ましいとされています。

腎臓提供側ともらう側との血液型は同じである必要はありません。最近は、生体腎移植の件数が増えてきており、透析を導入せずに最初から腎臓移植を選択する人もいます。

・一般社団法人 日本移植学会 生体腎移植ガイドライン
・腎不全 治療選択とその実際

移植手術

腎臓移植と人工透析、どっちが良い?

腎臓の機能が著しく低下した末期腎不全の根治療法は腎臓移植しかありません。腎臓移植は透析に比べて長生きする人が多く、生活の質を維持できる治療法です。

しかし、ドナーや手術が必要で、移植後は拒絶反応の心配をしながら免疫抑制剤を飲み続けなければならず、透析を選択する患者が多いのが現実です。

腎臓移植を選択するのは働き盛りの40代、50代に多い傾向があります。1)仕事や家庭、趣味活動など、充実した社会生活を送りたいという希望がある場合は、生活の質の向上を望める腎臓移植が向いているといえます。高齢や、心臓・肺に疾患があるなど、手術するリスクが高い場合は透析を選択せざるを得ないでしょう。

「腎臓移植と人工透析のどっちのメリットをとるべきか、どっちのデメリットを避けるべきか」は患者の体の状態や生活状況において変わります。自分の治療法の選択肢を確認したうえで、自分や家族が思い描く生活を送るためには、どっちが適しているかを主治医とよく相談することをおすすめします。

・腎炎隊

まとめ

腎臓の機能を補う透析か、根治療法の腎臓移植のどっちが良いかを悩む人も多いでしょう。どっちもメリット・デメリットがあり、希望する生活や体の状態によって適した治療法は異なります。

腎臓移植はドナーや手術の必要性、術後の拒絶反応のリスクなどもあり、日本では透析を選択する人が圧倒的に多いのが現状です。どっちが自分に適しているか、家族や主治医とよく相談して決断しましょう。

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