長期留置カテーテルはシャントができない透析患者の味方です
透析治療では一般的にはシャントが用いられますが、シャントが使えないときの方法として長期留置カテーテルがあります。
日常的な管理が必要であり、合併症のリスクがあるため、長期留置カテーテルの適応となる患者は限られています。長期留置カテーテルはどのようなケースに用いられるか、必要な管理や合併症などを知っておきましょう。
長期留置カテーテルとは?
長期留置カテーテルとは首の内頚静脈や鎖骨の下の鎖骨下静脈、太ももの付け根部分の大腿静脈などの太い静脈にカフ付きのカテーテルを深く挿入し、血液透析を行う方法です。カテーテルのカフが皮下組織と癒着してカテーテルが固定される仕組みです。
血液透析時はカテーテルの出口部分を血液回路とつなぎ、カテーテルを介して血液を体から取り出し、透析器を通って浄化された血液を再び体内に返せるようになっています。
長期留置カテーテルのリスク
長期留置カテーテルは、感染のリスクやカテーテルが詰まってしまう(閉塞する)リスクがあり、トラブルを防ぐために日常的なカテーテルの管理が重要です。
カテーテルを交換しなければならないタイミングは患者によって異なり、長ければ年単位で持ちますが、早ければ数ヶ月で交換が必要となる患者もいます。カテーテルの管理を在宅で行えるのであれば、外来での透析治療も可能です。
・茅ヶ崎中央病院 透析センター
・長期留置カテーテルの管理
・池田バスキュラ―アクセス・透析・内科 透析アクセスにおける進歩と展望
長期留置カテーテルの使用にあたって
長期留置カテーテルによる透析はどのようなケースで選択されるのか、カテーテルの挿入方法や入浴、管理、消毒について詳しく説明していきます。
どんなケースで使うの?
透析治療では、体から大量の血液をとり出すために一般的に患者の血管にシャントを作成して血液の出入り口を確保します。しかし、血管がもろくなって使えない場合や、心臓の機能が低下している場合はシャントを作成できません。
シャントを作成できない場合には、動脈表在化や長期留置透析用カテーテルが検討されます。動脈表在化は腕の動脈に直接針を刺しやすいようにするために、皮膚のすぐ下まで動脈を手術で持ち上げる方法です。
ただし、透析機器を通った血液を体に返すための静脈がもろくなっていると動脈表在化は選択できず、長期留置カテーテルが選択されることが多くなります。
そのほかにも、認知症や四肢の拘縮などにより、穿刺やシャントの固定が難しい場合や穿刺時の痛みが非常に強い場合などに長期留置カテーテルが選択されることがあります。
・板橋中央総合病院 臓器移植センター 専門医療について カテーテル
・茅ヶ崎中央病院 透析センター
・たまき青空病院 バスキュラーアクセス外来(透析シャント)
・認定看護師便り 2017年2月発行 血液透析治療に必要なバスキュラーアクセスについて
挿入方法は?
カテーテルを挿入するためには手術が必要となり、局所麻酔下または全身麻酔下にて行われます。挿入するカテーテルの種類や患者の状態・生活習慣などによってカテーテルを挿入する部位やカテーテルの先端位置が決定されます。
入浴はできる?
入浴やシャワー浴は血圧の変動や体への負担がかかる活動のため、可否については医師の許可が必要となります。また、血圧の低下が起きやすい血液透析後は、原則入浴は禁止です。
長期留置カテーテルで入浴する場合は、カテーテルと出口部分をビニールや防水テープなどで覆う処置を行い、カテーテルとカテーテルの出口部分を濡らさないように管理する必要があります。
管理や消毒について
長期留置カテーテルを管理するうえで、感染やカテーテルの位置のずれに注意が必要です。
洋服はカテーテルの出口部分を引っ掛けることのないように、前開きのものを着るようにします。消毒は、カテーテルの出口部分の皮膚を消毒し、滅菌ガーゼとドレッシングテープなどで覆って感染しないように保護します。
カテーテルの長さや感染の兆候などの変化があれば医療機関への連絡が必要です。
長期留置カテーテルの合併症
長期留置カテーテルでは次のような合併症がみられます。
カテーテル感染
カテーテル感染には出口部分の感染、皮下に通っているカテーテルの皮下トンネル部位に起こるトンネル感染、カテーテル内の感染があります。
感染を起こすと全身状態が一気に悪くなる場合もあるので、感染しないように次のことを心がけましょう。
- カテーテルの出口部分の皮膚を清潔に保つ
- カテーテルと出口部分の消毒・管理をしっかりと行う
- 皮膚の赤みや痛み、発熱など、感染の兆候がみられたらいち早く医療機関に連絡し、処置を受ける
カテーテル内血栓形成
カテーテルの中に血の塊(血栓)ができると血液の流れが悪くなります。血液透析時に医療スタッフによって、血液が体の外へ出てきにくいことや静脈圧が上昇すること、血液透析前に血液を抜いたときに血栓が見つかることなどで気づかれます。
カテーテルの位置異常
カテーテルを引っ掛けたり引っ張ったりしてしまい位置がずれてしまうことがあります。毎日の処置で少しずつカテーテルが抜けてくることもあるため、カテーテルの出口部分からの長さの変化やカフが皮膚の外に出てきていないかを確認します。変化があったときは医療機関に連絡し、適切な処置を受けましょう。
長期留置カテーテルの管理
日本透析医学会雑誌 38巻9号2005 (2)長期型バスキュラーカテーテルに関するガイドライン
まとめ
長期留置カテーテルはシャントや動脈表在化による透析治療が行えない場合に用いられます。
カテーテルが血管内に挿入された状態で出口部分が体の外へ出ているため、感染のリスクが伴い、日常的な管理が必要となります。管理を適切に行うことができれば、カテーテルを留置したまま自宅で生活し、外来で透析治療を受けることも可能です。
カテーテルの合併症を防ぐには、変化にいち早く気づけるように、カテーテル出口部分の周囲の観察や体調チェックが大切になります。
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