透析すると尿が出ない?それは当たり前のことです
透析を始めたばかりの頃は少ないながらも尿は出ていたのに、透析を続けているうちに尿が出なくなったということがあります。
これは、透析治療を受けたから尿が出なくなったのではなく、だんだんと腎不全が進んで腎臓の働きが失われるために起こります。腎臓の構造や腎臓の働きとともに、透析患者さんの尿が出なくなる理由を探っていきましょう。
透析患者は尿が出ません
慢性腎臓病で透析治療を必要とする場合の腎臓は末期腎不全の状態で、腎臓の機能は正常時の10%以下となっています。
透析治療は失われた腎臓の機能を補うための治療であり、低下した腎臓の機能を良くすることはできません。そのため、透析導入時にはわずかに残存している腎臓の機能によって尿が出る状態であっても、腎不全が進むとともに腎臓の機能は低下して、尿は出にくくなっていきます。最終的には腎臓の機能は廃絶し、尿は出なくなります。
知っておきたい腎臓の構造
腎臓は腰の上あたりの背中側に、背骨を挟んで左右にひとつずつ位置しています。そら豆に似た形をしており、大きさは握りこぶしよりやや大きいくらいです。
中央部分は少し窪みがあって、老廃物のたまった血液を腎臓に運ぶ腎動脈と、腎臓で濾過されてきれいになった血液を心臓に戻す腎静脈が通っています。腎臓で作られた尿を膀胱へと運ぶ尿管も中央の窪み部分につながっています。
腎臓を縦割りすると、腎臓の内部は外側が皮質、内側が髄質に分かれています。1つの腎臓の皮質には1個の糸球体と1本の尿細管で構成されるネフロンが100万個存在しています。
糸球体は、腎動脈を通って運ばれてくる老廃物のたまった血液を濾過しています。老廃物や不要な水分は糸球体の毛細血管の外へと濾しだされて原尿となり、きれいになった血液は腎静脈から出ていきます。
原尿は糸球体の先にある尿細管を通って、さらに老廃物やミネラルなどの不要なものを排出し、水分やミネラルの一部などの体に必要なものを体に戻し、尿が作りだされます。
・アークレイテキスト 腎臓の構造と機能
・一般社団法人 日本腎臓学会 1.腎臓の構造と働き
・CKD教育入院テキスト 第1章 腎臓のつくりとはたらき
・医療法人 修腎会 藤﨑病院 透析のはなし
・旭化成ファーマ株式会社 腎臓とはどんな臓器?
腎臓の働きは尿をつくること
体が働くために必要なエネルギーやビタミンなどの物質を腸から吸収する際には、水に溶けた状態で吸収します。吸収した水分のうち、汗や呼気、便の水分として体の外に出ていく水分を除くと1日当たり約1.0~1.5リットルの水分が体の中で余ります。
腎臓は体にとって余分な水分を尿として体の外へと排出する役割があります。水分とともに、体に残っていると悪影響を及ぼす老廃物も腎臓は尿として体の外へと排出しています。
尿をつくるはたらきは腎臓のネフロンで行われていますが、腎不全になって腎臓の機能が低下すると、正常に機能するネフロンの数が減ってしまいます。
すると、正常に働いているネフロンに負荷がかかって部分的に壊れてしまい、さらに正常に機能するネフロンの数が減少するという悪循環に陥ります。こうして正常の機能の10%以下になってしまった状態が、透析が必要となる末期腎不全の状態です。
腎臓は尿をつくる以外にも「ミネラルバランスや体の酸性・アルカリ性のバランスを整えるはたらき」「造血ホルモンを作り出すはたらき」「ビタミンDを活性化するはたらき」「血圧の調節に関するホルモンをつくるはたらき」があります。
まとめ
腎臓は尿をつくる働きをしています。透析患者さんは腎臓の機能が限りなく低下している状態のため、尿が出にくくなります。
透析治療は失われた腎臓の機能に代わって、尿として体の外へと排出されるはずの水分や老廃物を除去したり、ミネラルバランスを整えたりしています。透析を開始した頃はまだ尿が出ていても、時間経過とともに腎臓の機能低下は進むため、だんだんと尿は出なくなってしまうのです。
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