食欲が出ない。透析患者さんの食欲不振の原因と気を付けたいこと
食欲不振の状態に早く気づいて対策をとれるように、透析患者さんが食欲不振になる理由を知っておきましょう。食欲不振のときにエネルギーや栄養を摂ることのできる食事の工夫も紹介しています。食欲不振から起こる痩せや低栄養の予防と対策の参考にしてください。
透析患者さんで食欲不振に悩む方は多い
透析患者さんでは食欲不振に悩む人が多くいます。海外の調査では透析患者さんの40%に食欲不振がみられたという報告があります1)。
食欲がなくなると、食事の量が減って筋肉が落ちて痩せ、低栄養となります。低栄養になると体力や免疫力が低下し、死亡率が高くなることも言われています。
透析患者さんが食欲不振となる理由としては次のことが考えられます。
- ・腎臓の機能低下によって体に尿毒素がたまる
- ・慢性的な炎症
- ・透析患者さんに多くみられる味覚障害のため、食事がおいしく感じられない
- ・加齢
- ・運動量、活動量の低下
- ・便秘
- ・食生活リズムの乱れ
- ・感染症やがん
- ・薬の副作用
食欲不振にならないためのチェックポイント
透析患者さんは老廃物の蓄積や味覚障害、加齢、活動量の低下、便秘、生活習慣、病気など、さまざまな理由によって食欲不振が起こります。食欲がないなと感じたら以下の状態に当てはまっていないかをチェックしてみましょう。
スケジュール通りに透析を受けることができているか、十分に除水ができているか
十分な透析治療を受けられず、老廃物を除去できていないと、老廃物が体にたまって食欲不振の原因となります。
便秘、または下痢が続いていないか
便秘や下痢が続き、快適に排便できていないと便秘でお腹がはる、下痢でお腹が痛いなど、食欲不振につながります。
運動不足でないか
家でじっとしていることが多く、身体を動かす機会が少ないとお腹が空かず、食欲不振になります。筋肉量や筋力も減り、身体を動かすことが億劫になってさらに食欲不振を悪化させます。
定期検査を受けているか
感染症やがんなどの病気があると食欲不振の原因になります。定期検査を受けてほかの隠れた病気がないかをチェックすることが大切です。
味覚障害がないか
味がしない、何を食べても苦いなどの味覚障害が食欲不振につながっていることが考えられます。味覚障害があることを主治医に相談し、適切な治療を受けましょう。
食生活リズムは乱れていないか
朝食を抜くことが多い、透析前に食事を抜くなど、食生活のリズムがバラバラだと食欲不振につながります。決まった時間に食事を摂ることが大切です。
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食欲不振になったときの工夫例
食欲不振の状態が続くと食事量が減り、栄養障害に陥ります。食欲不振があるときには少ない食事量でエネルギーをしっかり摂れる工夫をしてみましょう。
- 1回の食事量を減らして、1日4~5回に分けて食事を摂る
- 揚げる、炒めるなどの調理法でエネルギーアップをはかる
- だしの旨味、酢やレモンなどの酸味、カレー粉、ショウガなどの香辛料、しそやネギなどの香味野菜でアクセントをきかせた味付けにし、食欲増進を促す
- お粥に卵や白身魚を混ぜてたんぱく質を同時に摂れるようにする
- エネルギー補給やたんぱく質を補給できる特殊食品を利用する
- 透析食の配食サービスを利用する
- 水分を摂りすぎない
- メインのおかずから食べて栄養を確保する
- 食器や盛り付けにこだわって見た目を豪華にして食欲を促す
こまめな間食も食欲不振時には効果的
食欲がないときには食事の間にこまめな間食を挟むのも効果的です。間食には次のような口当たりがよくてエネルギーを摂れる食べ物がおすすめです。
- アイスクリーム
- プリン
- 水ようかん
- 缶詰の桃
- ゼリー飲料
まとめ
透析患者さんは加齢や老廃物の蓄積、慢性的な炎症、活動量の低下などの理由から食欲不振に陥りやすくなります。食欲不振が続くと、食事量が減りエネルギーや栄養を十分に摂れず、痩せや低栄養の状態となります。低栄養は死亡率を高めることも報告されており、工夫してエネルギーや栄養を確保することが大切です。
食事回数を増やす、間食をこまめにとる、エネルギーを摂りやすい調理法を選択する、特殊食品を利用するなどの工夫をしてみましょう。
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