睡眠時呼吸障害にも要注意?透析患者さんの睡眠について
透析患者さんでは不眠や寝つきの悪さなどの睡眠障害がみられますが、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠呼吸障害が原因となっている場合もあります。
睡眠時呼吸障害は心血管疾患の発症や死亡リスクを高めるため、対策が必要です。睡眠呼吸障害でみられる症状や対策について確認していきましょう。
透析患者さんは睡眠時呼吸障害を合併しやすい
透析患者さんで睡眠時呼吸障害のうちのひとつの睡眠時無呼吸症候群(SAS)を合併している割合は40~60%程度とされています。全体では睡眠時無呼吸症候群は成人男性の3~7%程度、女性の2~5%程度にみられることから、睡眠時無呼吸症候群を合併する透析患者さんは一般の人に比べてかなり多いことがわかります。
透析患者さんは睡眠時無呼吸症候群の要因となる肥満や糖尿病、心血管疾患を抱えている場合が多くみられます。
睡眠時無呼吸症候群による高血圧の症状が腎不全の悪化を進め、相互に影響しあって心血管疾患の発症や死亡リスクを高めると考えられています。
参考文献1:循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
参考文献2:一般社団法人 日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)
睡眠時呼吸障害にみられる症状
睡眠時呼吸障害は寝ている間にみられる異常な呼吸をまとめた呼び方です。
代表的なものに閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)や中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)、があります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は寝ているときに喉が塞がって気道が狭くなり、呼吸が止まります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状では次のような症状がみられます。
- ・睡眠中の大きないびき
- ・睡眠中に呼吸がたびたび止まる
- ・睡眠中の異常な寝返り
- ・昼間の耐えがたい眠気
- ・熟睡できない
- ・体がだるい
- ・夜寝ているときに呼吸が苦しい
- ・夜に何回もトイレに起きる
- ・起きたときに頭が痛い
- ・夜寝ているときに目が覚める
- ・集中力が低下する
- ・よく眠れない
- ・性機能の低下
- ・幻覚、うつ
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)は脳の呼吸を司る部分の異常によって呼吸の指令が出なくなり呼吸が止まります。閉塞性のように喉が塞がることはありません。
よく眠れない、日中に過剰に眠くなる、体がだるい、夜寝ているときに呼吸が苦しくなって目覚めるなどの症状がみられ、激しい呼吸と無呼吸や浅い呼吸が交互に現れるチェーンストークス呼吸が昼間にも起こることがあります。
透析患者さんの睡眠障害の種類
透析患者さんでは中枢性および閉塞性の無呼吸症候群による睡眠障害もみられますが、それ以外の原因によっても不眠や寝つきの悪さなどの睡眠障害が生じます。
透析患者さんでみられる睡眠障害には次の種類があります。
- ・睡眠時無呼吸症候群
- ・腎不全や透析による皮膚のかゆみや痛みの症状による睡眠障害
- ・尿毒症の症状のひとつである、足にかゆい、痛い、ほてり、虫が這うような感じがするむずむず脚症候群による睡眠障害
- ・腎不全や透析、飲んでいる薬が睡眠中枢に影響して生じる睡眠障害
- ・腎不全や透析による活動性の低下や運動不足、透析治療のストレスの影響による睡眠障害
- ・透析患者さんに合併の多いうつ病などの精神障害の症状としてみられる睡眠障害
睡眠時呼吸障害への対処法
透析による活動性の低下やストレスの影響で生じる睡眠障害は生活習慣の見直しや眠る前の工夫で改善できるものもありますが、睡眠時呼吸障害などのほかの病気が原因で起こる睡眠障害は治療が必要です。
閉塞性では睡眠中に鼻にマスクを当てて空気を送り込み、気道が塞がれてしまうのを防ぐCPAP療法や気道が塞がらないように保つマウスピース療法を行い、中枢性では在宅酸素療法や呼吸を補助する機器での治療を行います。
まとめ
睡眠時呼吸障害は腎不全の悪化や心血管疾患の発症、死亡リスクにつながるため、治療が必要です。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中のいびきの症状がよく知られていますが、いびきがみられない中枢性睡眠時呼吸障害もあるので、睡眠中の呼吸の苦しさ、昼間の過剰な眠気、体のだるさなどがある場合は主治医へ相談しましょう。
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