肌の乾燥にも要注意!透析患者さんと乾燥肌の関係
健康な人でも肌の乾燥は起こります。肌が乾燥する一般的な原因としては、肌の保湿に関わる要素の機能低下が挙げられますが、透析患者さんの肌の乾燥が起こる原因は少し異なるようです。
透析患者さんの肌の乾燥が起こる原因と乾燥肌を予防する具体的なケア方法を知り、日常生活に取り入れていきましょう。
透析患者さんは肌が乾燥しやすい
透析患者さんでは肌が乾燥している人が多く、透析を長期間行っている人ほど肌の水分量や皮脂量が少なく、肌が乾燥しています。肌の乾燥はドライスキン、皮脂欠乏症、乾皮症などと呼ばれます。
肌の乾燥とは
肌の表面の部分である表皮のいちばん外側にあるのが薄さ約0.02mmの角層です。角層には水分が保たれており、水分が肌の外に蒸発しないように防ぐはたらきと、肌の外から菌やほこりが入ってこないように守るはたらきがあります。
肌で水分を保つはたらきをする要素が、肌表面の皮脂膜と角層の角質細胞間脂質と天然保湿因子です。
- ・皮脂膜:皮膚の表面から水分が蒸発してしまうのを防いでいる皮脂と汗が混ざり合ってできている膜
- ・角質細胞間脂質:水分をサンドイッチ状に挟み込んで潤いを保っているセラミドなど
- ・天然保湿因子:角質細胞の中の水分を保持しているアミノ酸や尿素など
乾燥している肌はこれら3つの潤いを保つはたらきをしている皮脂、角質細胞間脂質、天然保湿因子が少なくなっています。
潤いが保たれている肌の表面は滑らかですが、乾燥していると肌の表面が鱗のようにささくれて外界の影響を受けやすくなっています。外の空気が乾燥していると肌の水分が蒸発してさらに乾燥するという悪循環を辿ります。
参考文献:皮脂欠乏症の主な原因:透析
肌が乾燥する原因
透析患者さんの肌では、透析治療の影響で皮脂を出す皮脂腺や汗を出す汗腺が萎縮しています。分泌される皮脂や汗の量が少なくなるため皮脂膜が十分につくられない状態です。
皮脂膜が不十分な状態であると、本来であれば角層の中の水分が蒸発してしまう量が多くなるはずです。ですが、透析患者さんは皮膚の表面から蒸発する水分量は健康な肌よりも少ないことがわかっています。
ではなぜ、皮脂膜が不十分な状態なのに角層から蒸発していく水分が少ないのでしょうか。その理由として透析患者さんはもともと角層に含まれる水分量が少ないからだと考えられています。
さらに、透析患者さんの肌では角層の水分を保つはたらきはほとんど影響を受けずに機能しています。これらから透析患者さんの肌が乾燥しているのは、角層の肌の水分を保持する機能の質的な問題ではなく、透析治療の除水や日常的な水分制限のために肌へ与えられる水分量が少ないための量的な問題であるといえます。
また、肌が乾燥するとかゆみに対して敏感になり、かゆみが出やすくなります。かゆくて掻いてしまうことによって肌は傷つき、外の刺激から肌を守る機能が壊されて乾燥やかゆみは悪化していきます。
お肌の乾燥ケアのポイント
透析患者さんのお肌の乾燥ケアのポイントは、かゆみが出やすい状況を避けること、外の刺激から肌が傷つかないように守ることです。具体的には次のことを心がけましょう。
- ・肌が汚れていると刺激となり、かゆみを誘発します。シャワーや入浴で肌を清潔に保ちましょう。
- ・肌を傷つけないために、体を洗うときはナイロンタオルでゴシゴシこすらず、洗浄力の強い洗浄剤は控えましょう。肌に優しい綿などの素材のタオルで優しく洗い、低刺激の石けんを使うようにします。石けんの泡が残らないようにしっかり洗い流しましょう。石けんは肌の油分を奪ってしまうので使いすぎに気を付けましょう。
- ・保湿剤入りの入浴剤を使うこともよいですが、硫黄の入ったものは肌が乾燥するため避けましょう。
- ・入浴後はすぐに肌に保湿剤を塗って肌表面を守りましょう。
- ・体を過度に温めることはかゆみを増強するため避けましょう。(必要以上の厚着、カイロを貼り付ける、高温の湯につかる、暖房に直接あたる、強い日差しにあたる、チクチク刺激のある衣服を着るなど)
- ・かゆくて掻いたときに肌が傷つかないように爪は短く切っておきましょう。どうしてもかゆい時は冷たいタオルや保冷剤で冷やすとかゆみが和らぐことがあります。
- ・空気が乾燥しやすい冬は加湿器を使い、部屋の湿度を保ちましょう。
- ・かゆみが出た際は自己判断で市販薬を使わず、主治医に相談しましょう。
まとめ
透析患者さんの肌は透析治療での除水や水分制限で水分量が少なく、乾燥しています。肌が乾燥しているとかゆみに対して敏感になり、かゆみを感じやすくなります。肌を掻いてしまうと肌の表面が傷つき、乾燥やかゆみが増す悪循環に陥ります。
できるだけかゆみが出る状況をつくらないようにすることと、肌が傷つくことを避けることが大切です。特に乾燥する冬場は、肌の乾燥を防ぐケアをいつも以上に心がけるようにしましょう。
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