透析薬によるアレルギーに要注意!注意したい薬と主な症状
透析患者さんでよくみられるかゆみの症状は、薬に対するアレルギー反応から起こっている場合もあると報告されています。
そのほかにも、透析液自体にアレルギー症状がみられることがあります。アレルギー症状の中にはアナフィラキシーショックのような重篤な症状もあるため注意が必要です。
透析患者さんとアレルギーの関連について詳しくみていきましょう。
透析患者さんは薬剤アレルギーにも要注意
透析患者さんは透析治療で用いる薬剤に対してのアレルギーがみられることがあります。
アレルギーの症状としては、かゆみ、発熱、全身の赤い斑点、下痢、じんましん、気分不良、頻脈(脈が速くなる)、顔のむくみ、血圧低下、呼吸不全(呼吸が苦しくなる)などがみられます。
急速に起こる呼吸不全や血圧低下などのショック症状(アナフィラキシーショック)は命にかかわる大変危険な状態で緊急の処置が必要となります。
初めての透析時や薬剤の種類が変わった場合、透析液の種類が変わった場合などはアレルギー症状の出現に注意が必要です。
透析治療に用いられる薬とアレルギーの関係
透析患者さんの副作用としてかゆみの症状がよくみられます。かゆみがみられる要因としては、透析患者さんは日常的な水分量の制限や透析治療で除水をすることによって皮膚乾燥が起こりやすいことが挙げられます。
また、それだけが原因ではなく薬剤アレルギーの場合もあります。
透析治療で用いる透析液自体に対する薬剤アレルギーや、透析治療時に血液が固まらないように使用する抗凝固薬に対してのアレルギーが報告されています。
薬剤だけでなく、透析で使用される透析器の透析膜とアレルギーの関連も言われています。
アレルギー反応に注意したい透析薬と主な症状
透析治療で用いられる薬でみられるアレルギー症状には以下のような例があります。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
血圧を下げる作用があり、高血圧を合併している透析患者さんに用いられます。
血液中の老廃物や余分な水分を透析液へ移動するろ過装置であるダイアライザーに用いられる透析膜の種類が合成高分子膜AN69 を使用している透析患者さんがアンジオテンシン変換酵素阻害薬を服用した場合に、次のようなアナフィラキシー症状がみられたことが報告されています。
- ・顔・喉がむくんで腫れる
- ・嘔吐
- ・腹部・気管支の痙攣
- ・血圧の低下
- ・チアノーゼ(血液中の酸素不足により唇や爪の色が青くなる)
メシル酸ナファモスタット
メシル酸ナファモスタットは血液を固まらせにくくする抗凝固薬です。血液を固まらせにくくする作用は透析の血液浄化回路内のみであり、消化管出血などの出血傾向がある透析患者さんに対して使用されます。
呼吸不全や血圧低下などのショック症状や発熱、全身の発疹といったアレルギー症状が透析開始後にみられた例や透析が終了してからみられた例が報告されています。
酢酸含有重炭酸透析液
酢酸含有重炭酸透析液を使用した透析患者さんで、透析をしてから発熱、全身に赤い斑点、下痢などの症状がみられたことが報告されています。酢酸含有重炭酸透析液でアレルギー症状をきたす報告例は少ないですが、重篤化するため注意が必要です。
イコデキストリン透析液
トウモロコシデンプン由来のイコデキストリンが含まれている透析液で皮膚障害や肝障害、腎障害のアレルギー症状が出た例が報告されています。
まとめ
透析患者さんは透析治療で用いる透析液や血液を固まりにくくする抗凝固薬の使用でアレルギー症状がみられることがあります。
アレルギー症状はかゆみの症状や急速に起こる呼吸不全や血圧低下などの重篤なものまでさまざまです。アレルギー症状がみられるタイミングも透析治療を開始してからすぐにみられる場合や透析治療後にしばらくたってから出る場合もあります。
今までにアレルギー症状を経験している透析患者さんは透析治療を受ける前に主治医に必ず「いつ、何に対して、どのような症状がみられたか」を伝えましょう。
透析治療でかゆみや身体が赤くなるなどの症状がみられたら透析治療中であれば医療スタッフに、帰宅後はかかりつけの病院に連絡しましょう。
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